アメリカで人気のモータースポーツカテゴリNASCARの開幕戦がデイトナで開かれ、ダニカ・パトリックが史上初の女性ポールシッターになった。この快挙にパトリックの名が多くの新聞を飾り、アメリカのモータースポーツファンを喜ばせた。
2011年までインディカーで活躍し、2012年からNASCARにフル参戦を始めたパトリックは、その実力と人気から、F1転向も幾度となくうわさされている。巨大市場であるアメリカでの人気回復を願うF1界にとってパトリックは魅力的なドライバーだが、パトリック本人はF1への興味を否定してきた。
メルセデスの非常勤会長となった元F1チャンピオンのニキ・ラウダが、F1のボスであるバーニー・エクレストンに女性F1ドライバー復活を進言してきたことを明かした。
「過去10年間、私はバーニー・エクレストンに、女性F1ドライバーを復活させるべきだと話してきた。女性ドライバーが6位までに入れば、テレビを観るファンの数が2倍になるぞ、とね」
女性F1ドライバー復活に前向きなラウダだが、力不足のドライバーを世界最高峰のレースに出させるつもりはないようで、パトリックの実力についても疑問を投げ掛けている。
「アメリカのレースで使われる技術のレベルと、F1のレベルは比べ物にならないのだ。それは、ドライバーも同じことだよ」
「ヨーロッパのレースで活躍したアメリカ人は、マリオ・アンドレッティが最後じゃないか。私が現役だった時代だよ!」
63歳のラウダがそう主張するだけでなく、近年のF1で勝利を重ねているレッドブルでアドバイザーを務めるヘルムート・マルコもパトリックの力量を不安視している。
「ロードレースでのダニカの結果は、あまり芳しくない」
レッドブルのドライバー育成プログラムに入りトロ・ロッソからF1デビューを狙っている若手ドライバーは決して少なくないが、その中に女性ドライバーはひとりもいない。その事実についてマルコはこう話している。
「われわれは、条件ではなく走りでドライバーを選んでいるんだ」
F1チャンピオンのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は「まず、ダニカの偉業に脱帽だよ」とパトリックのポールポジション獲得を讃えたが、「でも、アメリカのモータースポーツは(F1と)まったく文化が違うんだ」と話し、ラウダやマルコと同様に、パトリックのF1転向を歓迎しない姿勢を見せている。