イタリアの名門F1チームであるフェラーリだが、ドライバーズタイトルは2007年(キミ・ライコネン)、コンストラクターズタイトルは2008年が最後となっている。すでに2023年のタイトルにも手が届かないのは確実な状況となっており、15年にわたって無冠状態が続くことになる。
そのフェラーリは、今年からフランス出身のフレデリック・バスールを新たなチーム代表に迎えている。
そして、バスールは、近年イタリア人を中心とするチーム作りを目指していたフェラーリの方向性にメスを入れ、国籍を問わず、積極的にライバルチームなどから優秀な技術者を招き入れようと試みているようだ。
■メルセデスからもトップレベルの技術者を確保か
昨年までアルファロメオのチームCEO兼代表を務めていた55歳のバスールは、最近のフェラーリの人材確保状況についてイタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』に次のように語った。
「我々は25人ほど採用したよ。だが、さらに探しているところだ」
そう語ったバスールは、メルセデスからも優秀な人材を引き抜くことに成功したと次のように続けている。
「我々は第一人者とも契約を結んだよ。彼は2025年1月1日に始めることになっている。だが、もっと早く彼を自由にしてくれるよう、トト・ヴォルフ(メルセデス/チーム代表)を説得するつもりなんだ」
「(ヴォルフと)一緒に船に乗っているときに試みてみるよ」
笑いながらそう語ったバスールは、次のように付け加えている。
「最初の契約が一番難しいんだ。その後は、ほかの者たちもそれを見て後を追うからね」
フェラーリと契約を結んだメルセデスのトップレベル技術者が誰なのか、今後はこの話題もメディアを賑わせていくことになるかもしれない。
だが、バスールは、現在F1チームの多くがイギリスにファクトリーを構えていることが、イタリアのマラネロに本部があるフェラーリにとって人材確保の面で弱みとなっていることを認めている。
現在イギリスで活躍するF1技術者たちは、当然ながらイギリス国内に生活の基盤があり、現在の職を辞してイタリアへ移り住むのはやはりかなりハードルが高いことであるのは確かだろう。
■フェラーリのトップマネジメントとの関係は良好
一方、不振が続くフェラーリではチーム内に不和や混乱があるとの噂も報じられているが、バスールによればフェラーリ首脳部と自分の関係はうまくいっているという。
「少なくとも週に一度はヴィーニャと食事をするし、エルカーンとは朝食、昼食、夕食などと同じくらいに電話で話しているよ」
フェラーリのベネデット・ヴィーニャCEOとジョン・エルカーン会長の名を挙げながらそう語ったバスールは、次のように続けている。
「そういう関係は非常に大きなアドバンテージなんだ。私がルノーにいたとき(2016年)は、執行委員会を待たなければならず、その間に何日も何日も過ぎていった。ここでは、午前中に尋ねれば午後には答えが出るんだ」
「過去のことは私にはわからない。だが、私は内部コミュニケーションとトップマネジメントの対応力に感銘を受けたよ」