F1公式タイヤサプライヤーであるピレリのマリオ・イゾラ(モータースポーツディレクター)が、自分たちが製造しているF1用フルウエットタイヤには改良の必要があることを認めた。
■ベッテルに「クズ」だと指摘されたピレリのウエットタイヤ
F1で使用される雨用タイヤには、路面の水量が多いときに用いられるウエットタイヤと、水量が少ないときに使用されるインターミディエイトタイヤの2種類がある。
だが、そのうち、ウエットタイヤに関するドライバーたちの評価は著しく悪いものとなっている。
例えば、鈴鹿サーキットで今年3年ぶりに開催されたF1日本GP決勝は雨による赤旗中断となる荒れたレースとなったが、このときアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルはピレリのウエットタイヤを「クズ」だと評していた。
■ウエットタイヤは改善が必要だとピレリのF1責任者
ピレリのF1プロジェクト責任者であるイゾラは、それを否定せず、『motorsport-magazin.com』に次のように語った。
「我々はフルウエット(タイヤ)のパフォーマンスを改善する必要がある」
「我々がすでにいくつかの冬季テストを計画しているのはそのためだ」
イゾラは、ウエットタイヤ開発のための時間がチーム、あるいはレギュレーションによって十分に割り当てられていないのもタイヤの性能向上が進んでいない理由だと主張し、次のように付け加えている。
「我々はフィオラノ(サーキット)では路面温度45℃でセッションを行った。だが、マレーシアでさえそのような温度はないので、不可能な任務だったんだ」
■シーズン中のウエットタイヤ仕様修正も視野に
実際のところ、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)とピレリは、雨天を想定したテストを増やすことを検討しているようだ。
「現在のルールでは、12月15日までは現行車を使用することができる。そして、2月1日から来年の最初のレースまでは新車もテストに使用できることになっている」
そう語ったイゾラは次のように続けた。
「しかし、レインタイヤの仕様は年間を通して変えていくことを考えている。構造を少し変える必要があり、現在、シミュレーションモデルでこれについて検討しているところだよ」
「例えば、アクアプレーニング現象についても調査しているが、シミュレーションを行うのは簡単ではないんだ」
「また、視界の問題があることもわかっているが、水のほとんどはディフューザーから来るものだと思っている」
■雨天時にはタイヤカバーの装着も検討
今年のウエットレースではマシンが発生する水煙による視界の悪さが指摘されたが、それはグラウンドエフェクト効果が与えられた現在のF1マシンの構造による影響も大きいと考えられている。そのため、FIAは雨天時にはタイヤに“ホイールアーチ”と呼ばれるカバーを装着することでこの問題を改善できないかどうかを研究するよう依頼したことも明らかとなっている。
イゾラは、この件について、次のように付け加えている。
「FIAもそう考えているよ。タイヤだけのせいではないとね。我々はFIAと協議しており、彼らの提案に賛成しているよ」