レッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、2026年に大幅なレギュレーション変更が実施されれば、F1は再びチーム間の差が大きく広がってしまう「大きなリスク」があると考えている。
■レギュレーションが変わらなければ差は縮まっていくもの
2021年と2022年のF1チャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、今年も3年連続のドライバーズタイトル獲得に向けて順調な歩みを進めている。
だが、25歳のオランダ出身ドライバーは、今でこそレッドブルがライバルたちに大きな差をつけているものの、時間とともにその差は縮まってくるはずだと考えている。
「レギュレーションが同じままで変わらなければ、みんなの差は縮まっていくと僕は思う。だから、これは僕たちにとって目を向ける必要があることじゃないかな」
■2026年に新エンジンレギュレーション導入を控えるF1
しかし、3年後の2026年には、パワーユニットと呼ばれるF1エンジンの電動面の強化や合成燃料の使用を含む新たなレギュレーションが導入されることになっている。
そして、その2026年には、既存エンジンメーカーであるメルセデス、フェラーリ、ルノーに加え、フォルクスワーゲン傘下のアウディがザウバー(現アルファロメオ)と組んで新たなワークスプロジェクトを立ち上げるとともに、ホンダもアストンマーティンとのコラボで正式にF1活動を再開することになっている。
■新エンジンルール導入は「大きなリスク」だとニューウェイ
F1史上最も成功を収めたマシン設計者の1人として知られるニューウェイは、それがこのスポーツにとっては裏目に出るかもしれないと考えている。
「今の大きなリスクは、2026年にパワーユニットが新たに変わることだよ」
『Sky Italia(スカイ・イタリア)』にそう語ったニューウェイは、レッドブルの現在の優位性は主にエアロダイナミクスによるものであり、これに関しては後れをとっているチームが単純にコピーするのはかなり簡単なのだと説明し、次のように付け加えている。
「だが、もしもパワーユニットに大きな差がある場合、メーカーがその理由を理解し、縮めていくには時間がかかることになる。シャシー担当者たちはもっと早く対応できるんだ」
■再び2014年と同じことが起こる可能性も
64歳のニューウェイは、現在の「パワーユニット」時代が始まった2014年以降、メルセデスが2021年まで8年もの長きにわたって最強コンストラクターであり続けたという事実に言及しながら、次のように続けた。
「ハイブリッド時代のレギュレーションが最初に導入されたとき、そこには非常に大きな差があった」
「メルセデスがパワーユニットで素晴らしい仕事をし、ほかのチームは程度の差こそあれ、後れをとってしまった」
「今は、基本的には平準化されている。今は、パワーの違いは恐らく2パーセントもしくは3パーセントだと私は思っているが、それはコンマ2秒もしくは3秒にあたると思う。集団が非常に接近しているときにはそれでもまだ大きな差だ」
「しかし、それはルールが導入されたときの1秒差とは同じではないよ」
■レッドブルのエンジンは大丈夫?
ニューウェイとしては、新たなエンジンレギュレーションが導入される2026年には、各エンジンメーカーが投入する新たなパワーユニットの差が再び大きくなる可能性があり、それが非常に大きなリスクだと考えているわけだ。
とりわけ、レッドブルは2026年から自分たちのエンジン製造部門であるレッドブル・パワートレインズで内燃機関部分を設計・製造し、電動部分に関しては新たにフォードとコラボをする計画となっている。
エンジンメーカーとしてはルーキー的な存在となるだけに、ニューウェイとしてはレッドブルがそこで出遅れてしまうのではないかという不安を感じているのかもしれない。