F1公式タイヤサプライヤーであるピレリが、F1タイヤに関して、今年の保守的な取り組み姿勢を今後見直していくこともあるかもしれないと認めた。
当初、F1最高責任者であるバーニー・エクレストンから、レースでの見どころを増やすためにわざと急激に摩耗するタイヤを製造するようにとの指示を受けていたピレリ。だが、そのことにより2013年には悲惨なシーズンを送ることとなってしまった。シーズン中に発生したタイヤの破裂問題により、大きな批判を受けることとなってしまったからだ。
今季は、新たに導入されたV6ターボエンジンがこれまでよりも大きなトルクを発生されることもあって、ピレリのモータースポーツ責任者であるポール・ヘンベリーが、今シーズンのタイヤに関しては「少し以前のようなものへ立ち返った」と認めている。
「我々はこれまでのシーズンはかなり挑戦的だったから、チームにとっては戦略的に難しくなるばかりでなく、エンジニアリングの面でも難しいものとなっていた」
「いくつかのチームではうまく対応した。だが、そうできなかったところもあったはずだ」
今季はここまで、ピレリがより保守的に転じたことで、少なくとも彼らからある程度のプレッシャーを取り除いてくれているようだ。ヘンベリーは、そのことについて満足しているとしている。
だが、F1では再びピレリへの批判がじわじわと起こってきているようだ。
先週末F1スペインGP(第5戦)が開催されたバルセロナにおいて、フォース・インディアのセルジオ・ペレスは強くピレリに対する批判を行っている。ピレリの「必要以上に保守的」なタイヤのせいで、F1が下位カテゴリーであるGP2シリーズのクルマとあまりスピードに差がなくなるという「ばつの悪い」状態を迎えているというのがペレスの言い分だ。
「ピレリがこの声を聞き入れて対策を講じ、ファンにとってもっと面白いレースを見せられるようにしてくれることを期待しているよ」、とペレスは語った。
だが、ヘンベリーがそのペレスの意見に対して最初に示した反応は、ペレスのその「気の毒な」コメントは単なる「言い訳」にしか過ぎない、というものだった。
だが、スペインGPをもっと詳細に分析すれば、ペレスの言い分にももっともな部分があるとうなずけるかもしれない。
フィンランドの『Turun Sanomat(トゥルン・サノマット)』紙によれば、昨年は5レースを終了した時点では253回の追い抜きがあったものの、今年はそれが156回に減っているという。
ヘンベリーはその後、ピレリが2014年シーズン後半には、今の保守的な姿勢を緩和する可能性も示唆し、次のように語った。
「多分、シーズンのうちには、クルマも改善されてくるだろうし、そうなれば我々の選択も少し保守的過ぎるということになるかもしれない」
「もしF1カーのホイールスピンや横滑りの量が減ってくれば、タイヤがオーバーヒートする問題も少なくなってくる。そうなれば、我々としても今後のシーズンに向けて選択の見直しをしなくてはならないだろう。F1カーの改善の程度とその効果を我々が理解したときにはね」、とヘンベリーは結んでいる。