ハースは、先週末にオースティンで行われた今季のF1第19戦アメリカGPで投入した2023年型“Bスペックマシン”は決して失敗作などではなかったと主張している。
■期待した結果が得られなかったハースのBスペックマシン
ハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーによれば、アメリカGPに投入したレッドブルのような空力コンセプトを取り入れた改良マシンは「ハース史上最大のアップグレード」だったという。
しかし、金曜フリー走行ではまずまずのパフォーマンスを示したものの、その日の夕方に行われた予選ではケビン・マグヌッセンが14番手、ニコ・ヒュルケンベルグも16番手と期待したグリッド獲得はならなかった。
さらに、土曜日のスプリントシュートアウトでもヒュルケンベルグが16番手、マグヌッセンが17番手に沈み、19周で行われたスプリントではヒュルケンベルグが15位、マグヌッセンは18位と、マシン改良の効果がほとんど見られずに終わっている。
チームは、そのままの状態で日曜日の決勝を戦っても意味がないと判断し、あえてパルクフェルメ違反を犯してマシンのセットアップを変更。これによりマグヌッセンとヒュルケンベルグは決勝をピットレーンからスタートすることになった。
決勝では、ピットレーンスタートというハンデを負いながらも、ヒュルケンベルグが13番手、マグヌッセンが16番手でチェッカーを受け、その後ルイス・ハミルトン(メルセデス)とシャルル・ルクレール(フェラーリ)が失格となったことで、それぞれ11位、14位でハースにとってのホームレースを終えている。
■「リセットする必要があった」とマグヌッセン
決して期待していたような結果を得ることはできなかったハースだが、シュタイナーはアメリカGP後に、収穫はそれなりにあったと次のように語っている。
「ケビンとニコの発言のいくつかは勇気づけられるものだったよ」
また、デンマーク出身ドライバーである31歳のマグヌッセンは、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、タイヤの摩耗が激しいという特性を持っていたそれまでのマシンを修復することは不可能だったことから“Bスペックマシン”を製造するしか選択肢がなかったのだと次のように語っている。
「僕たちはリセットしなくてはならなかったんだ」
「古いマシンではこれ以上前進することはできなかった。ダウンフォースを増してもうまく機能しないし、もっと安定したダウンフォースが必要で、バランスの変化も少なくする必要があることがわかっていたんだ」
■スプリント週末だったのも不利に
ハースがアメリカGPで期待したような結果を残すことができなかったのは、このレースではスプリントが行われたことで、フリー走行が1時間しかなかったことも大きく影響していただろう。
ハースのエンジニアリングディレクターを務める小松礼雄は、金曜日に行ったマシンセッティングが基本的に間違いだったことを認め、次のように語った。
「少なくとも、我々はなぜそうしてはいけないのかを学んだよ」
■ピットレーンスタートを選択した意味はあったとヒュルケンベルグ
一方、36歳のドイツ人ドライバーであるヒュルケンベルグは、アメリカGP決勝を犠牲にしてピットレーンスタートを選択したことには「価値があった」と主張している。
「ピットからスタートしたにもかかわらず、僕たちはウィリアムズに近づいていた」
「久しぶりに、僕はほかのマシンをオーバーテイクしたよ。単に追い抜かれるだけではなくてね」
しかし、ヒュルケンベルグもハースF1マシンにはさらなる改良が必要であることも認め、次のように付け加えた。
「このマシンはいくつかのエリアにおいては改善されている。だけど、先代マシンからいくつかの弱点も受け継いでいるよ」
■少なくとも正しい方向に向かっているとシュタイナー
ハースF1マシンの最大の弱点は、レース中のタイヤの摩耗が大きいことだ。
これに関して、シュタイナーは次のように語っている。
「この問題を完全に解決するには、違うリアサスペンションが必要だ」
「それは来年にならないと手に入らない。我々はフェラーリにそれを依存しているからね」
シュタイナーは、アメリカGPに投入したBスペックマシンを「失敗作」だったとしてあきらめるつもりはないと主張している。
「我々がまずい仕事をしたわけではないよ。これほど大きなアップグレードをスタートさせるのは非常に厳しいことだったんだ」
「しかし、我々はリスクを承知でそれをやった。そして、以前よりも多くのことがわかったと思う。だが、それ(Bスペックマシン)がどれほどよいものなのかは、まだわからない」
58歳のシュタイナーはそう語ると、次のように付け加えた。
「少なくとも、我々は正しい方向に向かっているよ」