先週末に行われた2023年F1第14戦オランダGPで精彩を欠いたシャルル・ルクレールだが、自分がイタリアの名門F1チームであるフェラーリを離脱するつもりはないと主張している。
■ランキング4番手に低迷する今年のフェラーリ
フェラーリは2020年にコンストラクターズランキング6位と低迷したものの、以後2021年は3位、2022年は2位と徐々に戦闘力を増してきていた。
ところが、前チーム代表のマッティア・ビノットを更迭し、昨年までアルファロメオのチームCEO兼代表であったフレデリック・バスールを新チーム代表に迎えたものの、今季のフェラーリは再び低迷を余儀なくされ、現時点ではレッドブル、メルセデス、アストンマーティンに次ぐランキング4番手に沈んでいる。
■オランダで精彩を欠いたルクレール
そして、夏休みが明け、シーズン後半最初のレースとなった先週末のオランダGP予選でもカルロス・サインツが6番手、ルクレールが9番手とふるわず、決勝でもサインツは5位でフィニッシュしたものの、ルクレールは終始精彩を欠き、結局72周で争われたレースで41周を走り終えたところでリタイアしてしまった。
F1関係者の中には、ルクレールの調子が悪かったのは体調が万全ではなかったためだと考えている者もいるようだ。
伝えられるところによれば、ルクレールは夏休み中に耳の感染症を患ってしまい、オランダまで飛行機ではなく車で移動することが求められる状態だったという。
フェラーリによれば、予選Q3でもクラッシュを演じていた25歳のルクレールだが、レースでは序盤にマシンのフロアがダメージを負ってしまい、それがレースペースに影響していたのだという。
■ルクレールの不振に首をかしげる関係者たち
しかし、そのフェラーリの説明に納得していない者もいる。
ドイツ出身の元F1ドライバーであるラルフ・シューマッハは次のように語っている。
「彼ら(フェラーリ)がその理由を見つけること、そして、それが本当にフロアだったことを期待しているよ。そうでなければ、ルクレールにとっては余計に悪くなりそうだからね」
また、伝説的元F1ドライバーである故ニキ・ラウダを父に持つマティアス・ラウダも、母国オーストリアの『Servus TV(セアヴスTV)』に次のように語っている。
「私には、ルクレールのドライビングには元気がないように見えるよ」
「ラッセル(メルセデス)が彼をオーバーテイクしたときのようにね。普通、オーバーテイクが難しいコーナーではそう簡単には驚かないものだ。その後、彼はボッタス(アルファロメオ)に対してもほとんど戦おうとはしていなかったよ」
さらに、1996年のF1チャンピオンであるデイモン・ヒルも、オランダGPがF1デビュー戦だったアルファタウリのリアム・ローソンにさえオーバーテイクを許したルクレールについて『f1-insider.com』に首をかしげながら次のようにコメントしている。
「あんなトップドライバーにどうしてこんなことが起こるんだ?」
■事実上2023年シーズンを諦めたフェラーリ
イタリアのメディアの中には、ルクレールは、タイトル争いや優勝争いどころか表彰台に上ることさえ難しいマシンをドライブするモチベーションを失っているだけだと指摘しているものもあるようだ。
実際のところ、フェラーリF1チームを率いるバスールはすでに2023年型マシンの開発を中止し、2024年型マシン開発に焦点を合わせていることを認めている。
サインツもオランダGP決勝後に次のように語っている。
「僕たちは何が問題なのかを理解し始めているよ。だけど、今ではもう何かを変える余地はほとんどないんだ」
「マシンは出来上がっているし、開発もほとんど終わっている。だから、僕たちには来年に向けて取り組むことしかないんだ」
■フェラーリ愛を強調するルクレール
最近ではフェラーリが2024年で契約が切れるルクレールに対して2025年から新たな複数年契約を破格の条件で提示したようだとの噂もささやかれている。そして、その一方で、フェラーリに不満を持つルクレールはほかのトップチームへ移籍する可能性も探っているのではないかとも考えられているようだ。
こうした中、テレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』から、本当に必要なのはチームを変えることなのではないかと質問されたモナコ出身ドライバーのルクレールは、きっぱりとそれを否定している。
「それが今の問題ではないんだ。僕たちはチームとして集中し、改善しなければならない。その後どうなるかだね」
そう語ったルクレールは、次のように付け加えた。
「だけど、これまでずっと言ってきたように、僕はフェラーリを愛しているし、僕の一番の目標はこのチームと一緒にF1チャンピオンになることなんだ。そして、それを達成するためなら、僕は何でもやるよ」。