先週末にザントフォールト・サーキットで行われた2023年F1第14戦オランダGPでフェルナンド・アロンソが2位表彰台に上ったことは、アストンマーティンのチーム代表を務めるマイク・クラックにとって今シーズンの残りのレースに向けての力強い後押しとなったようだ。
●【2023F1第14戦オランダGP】レース結果・全セッションの結果・開催スケジュール
■7月にスランプに陥ったアストンマーティン
アストンマーティンは、今シーズンの序盤8レースではセバスチャン・ベッテルの後任として今季アルピーヌから移籍してきたアロンソが6度表彰台(2位2回、3位4回)に上る活躍を見せ、最強レッドブルに次いで速いマシンを持ち込んだと評価されていた。
ところが、7月に入るとアストンマーティンのパフォーマンスが低下し、第10戦オーストリアGPから第13戦ベルギーGPまで4戦連続で表彰台に手が届かない状況が続いていた。
これに関して、アストンマーティンのパフォーマンスエンジニアリングディレクターを務めるトム・マッカローは、この間はライバルチームたちの開発スピードが自分たちより勝っていたのだと認めている。
■オランダGPではアロンソが5戦ぶりの表彰台
しかし、先週末のザントフォールトでは、新たなアップグレードパッケージを搭載したアロンソのアストンマーティンF1マシンが再び強さを取り戻したように見える。
予選こそ5番手だったアロンソだが、決勝ではウィリアムズ、メルセデス、マクラーレンを追い抜くと、9戦連続勝利を収めたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に次ぐ2位でチェッカーフラッグを受け、5レースぶりに表彰台に戻ってきた。
だが、F1関係者の中には、先週末のレースでは変わりやすいコンディションの中で2005年と2006年のF1チャンピオンである42歳のアロンソの豊富な経験とスキルが違いを生んだものであり、アストンマーティンF1マシンの開発が本当にうまくいったのかどうかは今後のレースを見てみないとわからないと考えている者もいるようだ。
2022年からアストンマーティンF1チームを率いているルクセンブルク出身のクラックも、自分たちが進めてきたマシン開発に手応えを感じているものの、やはりこれから迎える特性の異なるサーキットでどう戦えるかが今後に向けてのカギとなると考えているようだ。
「パフォーマンスの低迷からこうして復活することができてかなり満足しているよ」
そう語った51歳のクラックは、次のように付け加えている。
「(開発成功は)間違いないと言えたらいいのだが、そのためにはもう少しデータが必要だ。非常に異なるサーキットであるモンツァ(第15戦イタリアGP/9月3日決勝)で様子を見なくてはならないが、これからもっと情報を得ることができるほかのレースも2レースか3レースはあるよ」
■アストンマーティンの目標は2位確保
今季はレッドブルのフェルスタッペンが別次元の強さを発揮しており、アストンマーティンにタイトル獲得のチャンスはないのが現実だろう。そのアストンマーティンにとって現実的な今季の目標は、メルセデスやフェラーリとの戦いを制してレッドブルに次ぐ2番手ポジションを確保することだろう。
しかし、その戦いはそうたやすいものではないだろう。
現時点においては、ドライバーズランキングではアロンソがレッドブルのフェルスタッペン、セルジオ・ペレスに次ぐ3番手に位置しているが、現在4番手のルイス・ハミルトン(メルセデス)との差はわずかに12ポイントだ。
また、コンストラクターズランキングにおいては、アストンマーティンは現在2番手のメルセデスと40ポイント差の3番手だが、4番手のフェラーリが14ポイント差で追い上げてきており、こちらも予断を許さない状況となっている。
だが、そのメルセデスとフェラーリとの今後の戦いにおいてはアストンマーティンが有利になる可能性もありそうだ。
というのは、メルセデスとフェラーリはすでに2023年型マシンの開発をストップしたと伝えられているものの、アストンマーティンは今後も2023年型マシンの開発を続けていく方針だからだ。
■これからも開発の手は緩めないとチーム代表
「今シーズンをストップするつもりはないんだ」
そう語ったクラックは次のように続けた。
「我々は開発を続け、オーストリアで始まった流れを覆していかなくてはならない」
「我々は(オランダGPでは)ファステストラップも取ったし、非常に強かった」
レース終盤に赤旗中断となったオランダGP決勝は、フェルスタッペンがトップ、アロンソが2番手の位置から残り6周で再スタートすることになったが、実際のところ、アロンソはこのチャンスにフェルスタッペンから勝利を奪うつもりで臨んでいたようだ。
結局、アロンソはフェルスタッペンから約3.7秒遅れの2位でレースを終えたが、クラックはそのことに言及しながら「惜しかった、惜しかった」と繰り返したクラックは次のように続けた。
「だが、次はもっと差を縮めないとならないよ」
「ファクトリーのみんなは本当にアクセルを踏み続けているんだ。7月のレースでパフォーマンス曲線が少し下がったときには、ファクトリーの明かりが消えることはなかったよ」
「我々は全てを分析し、ザントフォールト用、モンツァ用に新しいパーツを作ったし、シンガポール(第16戦/9月17日決勝)でもさらに投入するつもりだ。今は手を緩めたいは思っていないよ」
非常に厳しいバジェットキャップ(チーム予算上限値)ルールのもとで開発を継続していくのは実際にかなり困難なことだと考えられているが、アストンマーティンがそうした制約のもとで今後どれだけマシンのパフォーマンスを向上させていくことができるのかにも注目が集まることになりそうだ。