マイケル・アンドレッティが率いるアメリカ有数のレーシングチームであるアンドレッティ・オートスポーツだが、このほどGM(ゼネラルモーターズ)傘下の「キャデラック」と手を組んで、11番目のチームとしてF1への新規参戦を目指すことが明らかとなった。
■逆風を受けるアンドレッティのF1参戦に強力な後押し
アンドレッティは当初F1参戦に向けてスイスに拠点を構えるザウバーとの間でチーム買収交渉を行っていたものの、これが決裂したことで、その後は自分たちでF1チームを立ち上げることを表明。2024年からの参戦開始を目指してすでにF1や統括団体であるFIA(国際自動車連盟)に対して申請手続きを行っている。
しかし、F1チームたちは、これ以上チーム数が増えれば自分たちに分配される収益が減ることを懸念し、アンドレッティの新規参戦には反対の姿勢を示していると伝えられている。
実際のところ、少し前まではF1もFIAも、チーム数を現在の10チーム以上に増やすことには消極的だと伝えられていた。ところが、最近になってFIA会長のモハメド・ベン・スレイエムがF1チーム数を増やすことに前向きな姿勢を示したことから、今後の動向に関心が注がれていた。
こうした中、キャデラックの親会社であるGMと、アンドレッティのモータースポーツ事業を統括するアンドレッティ・グローバルが、FIAに対して正式に参戦の意思を示す予定であることを発表したものだ。
これが承認されれば、GMとアンドレッティは、アンドレッティ・キャデラック・レーシングチームとしてF1に参戦することになりそうだ。
■GMがF1参戦を目指す背景は?
GMがアンドレッティと共にF1進出を目指すことにしたのは、キャデラックの主要市場であるアメリカ国内でF1の人気が高まってきたことがあるようだ。2017年からアメリカのリバティ・メディアがF1の新オーナーとしてその運営に携わるようになったのを機にF1のレーダーがアメリカへ向けられてきたのは確かだ。加えて、Netflixのドキュメンタリーシリーズ『Drive to Survive』の成功がアメリカにおけるF1の認知度を上げる大きな要因ともなっている。
実際のところ、テキサス州オースティンでのF1アメリカGPに加え、2022年にはマイアミでもF1が開催。さらに今年はシーズン終盤にラスベガスでもF1が開催されることになっており、アメリカ国内で3つのF1グランプリが開催されることになっている。
F1には現在、フェラーリを始め、メルセデス、アストンマーティン、アルファロメオ、アルピーヌ(ルノー)といった世界的な高級車ブランドが参戦している。さらに2026年からはフォルクスワーゲン傘下のアウディのF1参戦が確定しており、ポルシェも参戦の機会を探っている状況だ。
また、最近の噂によれば、レッドブルがホンダとのエンジン供給契約が切れた2026年からはアメリカのフォードと手を組むことになる可能性があるとも考えられている。
こうした中、すでに、キャデラック、コルベット、シボレーといったブランド名で、IMSAスポーツカーレースや耐久レース、NASCAR、インディカー、NHRAドラッグレースなど、多くのレースに参戦しているGMとしても、今後の世界戦略に向けてF1の舞台で戦うことには大きな意味があると考えたものだろう。
■目指すはオールアメリカンチーム!アルピーヌとの提携も視野に
かつて1993年にはマクラーレンでアイルトン・セナのチームメートとしてF1を戦った経験もあるマイケル・アンドレッティは、今回発表された声明の中で次のように語っている。
「我々はFIAが提示した手順とステップによる評価プロセスに引き続き取り組んでいくことになる。その一方で、アンドレッティ・キャデラックがF1参戦を正式に承認されるという幸運に恵まれることを前提に、我々は楽観的に準備を続けていく」
また、アンドレッティ・オートスポーツの広報担当者であるライアン・ウェザーフォードは、キャデラック社と提携が成功すれば、アメリカ人ドライバーを起用することによりアンドレッティとGMはこのスポーツに「真のオールアメリカンチーム」を誕生させることができるとも語っている。
さらに、GMの広報担当者であるマイケル・アルバーノによれば、GMとアンドレッティは、ルノーのワークスF1チームであるアルピーヌと共同で、パワーユニットと呼ばれるハイブリッド方式F1エンジンを共同開発していくことを望んでいるという。
もしそうなった場合、GMは、ターボチャージャーやバッテリーシステムに関する専門知識を、その開発プロセスに持ち込むことが可能だという。