2021年限りでF1活動を撤退したホンダだが、今後もレッドブルのエンジン製造部門であるレッドブル・パワートレインズにおいて、自分たちが設計したエンジンの製造サポートを続けることになっている。
そのレッドブル・パワートレインズに関する興味深い噂がささやかれ始めているようだ。
その噂とは、2020年シーズンまでルノーのF1ワークスチームをチーム代表として率いていたシリル・アビテブール(肩書きはマネジングディレクター)が、レッドブル・パワートレインズの責任者としてF1の表舞台に戻ってくるかもしれないというものだ。
レッドブルは、2018年まで長期にわたってルノーエンジンを搭載し、2010年から2013年にかけてはセバスチャン・ベッテル(現アストンマーティン)を擁して4年連続でチャンピオンチームとなった実績を持っている。
だが、ハイブリッド方式の現行F1エンジンが導入された2014年以降はメルセデスが大躍進を見せた一方で、ルノーエンジンは開発に出遅れてしまっていた。そして、レッドブルとエンジンサプライヤーであるルノーの関係も悪化の一途をたどり、レッドブル首脳のクリスチャン・ホーナー(チーム代表)やヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)とアビテブールが公然と相手を非難し合うような状況も生まれていた。
レッドブルは結局2019年からホンダエンジンにスイッチ。そしてホンダにとって最後のF1シーズンとなった2021年にマックス・フェルスタッペンがドライバーズタイトルを獲得している。
ホンダからF1エンジンの知的財産権を譲り受けて自分たちでエンジン製造を続けていくことになるレッドブルだが、レッドブル・パワートレインズではすでにメルセデスの技術部門からかなりの人数を引き抜いたと伝えられており、メカニカルエンジニアリング責任者を務めていたベン・ホッジキンソンがレッドブル・パワートレインズのテクニカルディレクターとなることも決まっている。ただし、契約上の問題もあり、実際にホッジキンソンが着任するのは2023年になるようだとの報道もある。
こうした中、レッドブル・パワートレインズを誰が最高責任者としてリードするのかはまだ明らかとなっておらず、そのポジションにかつてルノーのプロジェクトをリードしていたアビテブールが招かれる可能性があるのではないかと考えられているようだ。
実際のところ、かつてアビテブールの下でルノーのエンジンテクニカルディレクターを務めていたレミ・タファンもすでに2021年7月にルノーを離脱したことが明らかとなっており、レッドブル・パワートレインズに移る可能性が高いのではないかと噂されている。
レッドブルでは、2020年6月までメルセデスでエンジン責任者を務めていたアンディ・コーウェルの獲得を目指したものの、その交渉は不調に終わったようだと伝えられているが、こうした背景を考えれば、かつての確執はともあれ、レッドブルがエンジン製造部門の責任者としてアビテブールを招聘する可能性があるという噂も、あり得ない話ではないかもしれない。