マクラーレン・レーシングのCEOを務めるザック・ブラウンが、新型コロナウイルスのパンデミックによってレースが実施できない状況にあるものの、すべてのF1チームが生き残ることがF1にとって非常に重要だと主張した。
マクラーレンはF1チームの中では最初に従業員の一時解雇に踏み切っていた。だが、最近ウィリアムも5月末まで社員に一時帰休を命じるとともに、チーム管理職やドライバーの報酬カットを実施することを発表している。
さらに、シルバーストンにファクトリーを構えるレーシングポイントも同様の対応をとることになったと伝えられており、バンベリーにファクトリーを置くハースも現在それを検討しているものと考えられている。
これは、イギリス政府が一時解雇された従業員に対して、その期間に支払われるはずだった賃金の80パーセントを補助する施策をとっているためだ。
F1チームばかりではない。F1最高責任者であるチェイス・キャリーとF1モータースポーツ担当マネジングディレクターのロス・ブラウンも報酬の20パーセントをカットすることになるとともに、F1商業圏の管理運営組織であるFOM(フォーミュラ・ワン・マネジメント)に務める500人の従業員のうち半数が一時解雇されることになると伝えられている。
こうした状況のもと、6日(月)には再びキャリーやFIA(国際自動車連盟)会長のジャン・トッド、F1チーム首脳らによるテレビ会議が行われ、そこで2021年から導入予定のバジェットキャップ(チーム予算上限値)のさらなる引き下げが話し合われたようだ。
当初の計画では2021年には1億7500万ドル(約190億円)のバジェットキャップが予定されていたが、最近の情勢を受け、これを1億5000万ドル(約164億円)にまで下げることはすでに基本的合意に達していると伝えられている。
しかし、この苦境を乗り切ってチームが生き残るにはバジェットキャップを1億ドル(約110億円)ほどにまで引き下げるべきだとの声も出ているようだ。
マクラーレンF1チームを率いるブラウンは、イギリスの『BBC』に対し、F1は現在4チームが存続の危機にひんするという「非常に脆弱」な状況にあると次のように語っている。
「いくつかのチームにとっては壊滅的な危機だし、たとえ1チームでもいなくなれば、F1全体が脅かされることになるだろう」
現時点では、いつ2020年のF1シーズンをスタートすることができる状態になるのかは全く分からない。だが、このままレースが開催できない期間が長引けば、資金が底をつき、経営が破綻するチームが発生しても不思議ではない。
「彼ら(F1チーム)が身動きできないままあと何か月耐えられるのかは分からない。F1シーズンにこういうことが起こるなどということはこれまで想像もできなかったからね」
フィンランドのテレビ局『C More(セイ・モレ)』でコメンテイターを務めるオッシ・オイカリネンはそう語ると、次のように付け加えた。
「だが、1チームでも失えば、F1にとっては大きな挫折となるだろう。それに代わる新しいチームを参戦させることはかなり大変なことだからね。だから、そういうことが起こらないようにすることが非常に重要だよ」