2021年のF1も残すところあと2戦となったが、現時点ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が現チャンピオンのルイス・ハミルトン(メルセデス)に8ポイントの差をつけてトップに立っている。
だが、来週末に初開催される第21戦サウジアラビアGP(12月5日決勝)では強力なメルセデスF1エンジンを持つハミルトンが有利だと考えている者が多いようだ。
ブラジルのインテルラゴス・サーキットで行われた今季の第19戦サンパウロGPで今季5基目のエンジンを投入して5グリッド降格ペナルティを受けたハミルトンだが、そのハンデをものともせず、決勝ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)をオーバーテイクして優勝を飾っている。
伝えられるところによれば、そこで投入された新エンジンはハミルトンにストレートで時速30キロメートルほどのアドバンテージをもたらしていたという。そして、レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)はそのハミルトンの新エンジンを「ロケット」だと表現していた。
メルセデスはその「ロケット」エンジンを第20戦カタールGPでは温存したものの、来週末のサウジアラビアGPで再びハミルトンのマシンに搭載することを計画している。
しかし、マルコは『f1-insider.com』に次のように語り、サウジアラビアでのメルセデスのアドバンテージはそれほど大きいものではないだとうという見方を示している。
「カタールでのハミルトンのストレートスピードによるアドバンテージはそれほど大きくはなかった。大体通常の範囲内だったよ」
「これは、FIA(F1統括団体の国際自動車連盟)がさらに厳しいテストを行うことにしたことからメルセデスが非常に柔軟なリアウイングを使用することができなくなったことによるものだ」
「メルセデスはサウジアラビアでまたロケットエンジンを使うだろう。だが、彼らはもはやリアウイングを低くすることができないから、それによって0.4秒のアドバンテージを得ることはできなくなるだろうね」
しかし、メルセデスはマルコのコメントを否定し、自分たちがカタールで使用したリアウイングはブラジルで使用したものと同じだったと主張している。
そして、いまだに建設が続けられていると伝えられているサウジアラビアGPの舞台となるジェッダ市街地サーキットには非常に長いストレートが設けられており、そこではメルセデスのエンジンパワーが大きなアドバンテージを持つことになると考えられている。
だが、このサーキットを設計したヘルマン・ティルケは、実際にこのサーキットがメルセデスに有利なものとなるかどうかはわからないと次のように語っている。
「力強いエンジンは助けになるだろう。だが、あそこにはいくつか高速コーナーもあるし、正しいセットアップができればレッドブルがアドバンテージを得ることもできるだろう」
また、スイス出身の元F1ドライバーであるマルク・スレールも次のように語り、実際にレースが始まってみないとレッドブル・ホンダとメルセデスのどちらが速いのかはわからないと示唆している。
「今シーズンは、メルセデスあるいはレッドブルに有利なコースだと考えられていたのにまったく逆の結果になったことが何度もあったよ」
こうした中、マルコは、ジェッダ市街地サーキットで違いを生むのはF1マシンよりもドライバーの腕の方が大きくなると考えているようだ。
「我々は市街地サーキットでのマックスの強さを信じている」
「彼はモナコで勝ったし、バクー(アゼルバイジャンGP)でもタイヤがバーストするまでは大きくリードしていたよ」
そう語ったマルコは次のように付け加えた。
「サウジアラビアでも、ドライバーが状況を一変させることがあると思っているよ」