先週末に開催されたF1スペインGPにおいて、4年連続F1チャンピオンであるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は、これまでの輝くF1キャリアでも最悪とも言える週末を迎えているようにも見えていた。
バルセロナでは、今季型車RB10のシャシーを変更して臨んだベッテルだが、初日には電気系トラブルでまったく走行ができずに終わると、予選でもQ3セッションでギアボックスにトラブルが発生してクルマをストップさせることを強いられていた。
これによりベッテルはギアボックス交換を余儀なくされ、決勝では5グリッド降格ペナルティーを受けて15番手からスタートせざるを得ない状況に追い込まれた。
ベッテルは10日(土)の予選後、次のように語っていた。
「うんざりしてきているよ。今年はほとんどすべての種類の問題を抱えてきているからね」
うんざりしているのは確かだろうが、少なくともベッテルはユーモアのセンスだけは失っていなかったようだ。
2014年のここまでの苦労は自分の精神面の強さに対するいいテストとなっているのではないかと尋ねられたベッテルは次のように答えた。
「う~ん、僕はまだこれまでコース上ではあまりテストできていないからねぇ」
「でも、これまでに行った周回数と自分の給料を比べれば、僕は(1周あたりでは)もっとも高級取りのドライバーになるよ」
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対してニヤリと笑いながらそう答えたベッテルは、次のように付け加えた、
「決勝に向けてよく休むことができたと言っておくよ」
かつてベッテルがトロロッソのドライバーであったときに同チームの共同オーナーであったゲルハルト・ベルガーも、苦戦が続いていることでベッテルのやる気が少しずつ失われ始めているかもしれないと考えているようだ。
フェラーリやマクラーレンで活躍した元F1ドライバーのベルガーは次のように語った。
「まず、彼(ベッテル)は、このルノーエンジンでは勝つチャンスがないということが分かっている」
「そして、4年にわたって常にトップの位置に君臨してきたベッテルにとって、今の状況では間違いなくやる気も下がってくるものだよ」
翌日の11日(日)に行われた決勝では、ベッテルは15番手という不利なスタート位置からうまく3回ストップ戦略を展開し、ポジションを大きく上げてチームメートのダニエル・リカルドに次ぐ4位でフィニッシュしている。レース中はファステストラップを記録するなどの意地を見せたベッテルは、レース後に次のようにコメントしている。
「すぐにでも彼ら(メルセデスAMG)を苦しめてやりたいと思っているよ。それが僕たちのやる気につながるんだ」
だが、3位と4位となり、少なくともメルセデスAMG以外のチームは凌駕(りょうが)してみせたレッドブルだが、トップでゴールしたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)と3位リカルドのレース終了時のタイム差は実に49秒にも開いていた。
メルセデスAMGを苦しめるどころか、このままさらに置いていかれるという状況が続けば、ベッテルのやる気もどこまで維持できるか微妙な状況を迎えるのは間違いないかもしれない。