テレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』で長年F1解説を務めてきたザッシャ・ロースは、ルイス・ハミルトンはメルセデスの事実上の“ナンバー1ドライバー”という地位を失ってしまったと考えている。
■移籍1年目にハミルトンに勝利したラッセル
2022年F1シーズンを迎えるにあたり、メルセデスはそれまで5年間にわたってハミルトンのチームメートを務めてきたバルテリ・ボッタスに替えて、2021年まで3年間ウィリアムズでF1経験を積んできた24歳の若手ドライバーであるジョージ・ラッセルの起用を決定。
そのラッセルは、シーズン序盤からハミルトンをしのぐ結果を残すパフォーマンスを披露。シーズン後半にはハミルトンも盛り返しを見せたものの、結局ラッセルが275ポイントを稼いでドライバーズランキング4位、240ポイントのハミルトンはランキング6位という結果に終わってしまった。
■ラッセルはハミルトンにとってロズベルグ以上のライバルに?
「ラッセルが1年目でハミルトンより多くのポイントを獲得するとは思わなかったよ」
そう語った50歳のルースは次のように続けた。
「私は2023年のハミルトンにはもっと期待している。だが、彼が文句なしのナンバー1であるかどうかは(あとから消すことができるように)鉛筆で書いておくよ」
「今のメルセデスは、ハミルトンの隣にニコ・ロズベルグがいた時代と似たような状況だと思っている」
現在のハイブリッド方式F1エンジンが導入された2014年以降、最強のF1マシンを手にしたハミルトンとロズベルグは激しいチーム内バトルを展開。2014年と2015年はハミルトンに軍配が上がったが、2016年にはついにロズベルグがハミルトンに勝って初タイトルを獲得。そのシーズン限りでロズベルグはF1を引退したが、ハミルトンとロズベルグの関係はもはや修復不能な状態にまでこじれてしまった。
ロースは、「昨シーズンの終盤にはラッセルをはっきりと優先していたし、メルセデスは非常に公平に対処していたと私は思うよ」と語り、これまでハミルトン中心だったメルセデスF1チームにも変化が起こりつつあると示唆している。
「だが、私はハミルトンとラッセルの間の状況が、ハミルトンとロズベルグの間にあったような状況になるとは思えないんだ」
「当時、外部に対しては常にロズベルグとハミルトンは対等な立場だと強調されていた。しかし、内部ではハミルトンの方が好まれていたよ。私の意見だがね」
ロースはそう語ると、次のように付け加えた。
「バルテリ・ボッタスが入ってきたとき、外から見ればハミルトンが明確なナンバー1だった。だが、ラッセルはボッタスではない。ラッセルはロズベルグのようにハミルトンと対等な立場になる可能性が高いだろうね」
■2024年以降もF1を続ける意向を示すハミルトンとメルセデス
だが、現在37歳のハミルトンはまだ当分F1を引退するつもりはないようだ。
メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフは今週、「ルイスはチームの一部であり、チームはルイスの一部だ。それが続かない理由はない」と語り、2023年末に満期を迎える現在のハミルトンとの契約をさらに延長する意向を示している。
2023年にメルセデスが再び勝利やタイトルを狙える位置まで上がってくるのかどうかに注目が集まるのは確かだろうが、同時に、メルセデスのチームメートバトルにも大きな関心が寄せられるのは間違いないだろう。