10日(水)にフェラーリの会長職を辞任することが明らかとなったルカ・ディ・モンテゼモーロは、フェラーリに別れを告げながら、その目に涙を浮かべていた。
フェラーリの会長であり、長きにわたってフェラーリF1チームの最高責任者の立場にあったモンテゼモーロ自身が、低迷を続けるフェラーリで更迭の憂き目に遭うこととなったのだ。
■モンテゼモーロへの慰労金は37億円強
カリスマ性を持ち、何かと批判の対象となることも多かったモンテゼモーロだが、2017年まではフィアットのライバル会社とは関係を持たないとの条件付きで、2,700万ユーロ(約37億円強)の慰労金を受け取ったとされている。
そのモンテゼモーロは、最近うわさされていた通りイタリアのアリタリア航空の運営に携わる可能性があることを10日にほのめかした。
モンテゼモーロの後任としてフェラーリ最高責任者となったフィアット会長のセルジオ・マルキオンネは、「我々にはフェラーリがサーキット上で真の能力を発揮するのを見たいという共通の願望があったが、これに関していくつかの誤解が生じてしまっていたのだ」と語り、自らがモンテゼモーロに引導を渡したことを認めている。
だが、モンテゼモーロも、マルキオンネも、今年のフェラーリ不振の最大の原因が今季から導入されたV6エンジンにあるということでは意見が一致しているようだ。
マルキオンネは10日(水)に「我々がエンジンに問題を抱えていることは火を見るよりも明らかだ」と語り、モンテゼモーロも、「我々は新しいエンジンシステムの重要性を過小評価してしまっていた」と述べている。
一方、F1最高責任者であるバーニー・エクレストンは、今回のモンテゼモーロの辞任は大きな痛手だと次のように語った。
「彼が去るというのは、私にとっては、エンツォさん(フェラーリ創設者のエンツォ・フェラーリ)が亡くなったときと同じような感覚だよ。彼(モンテゼモーロ)はフェラーリそのものだった。彼とフェラーリは一体だったんだ」
■フェラーリを変えるチャンスとなるか
だが、フェラーリが不振の渦から抜け出せないでいる原因は、マラネロの現体制が抱える風土病のようなものだと考えている者もいる。
現在、ケータハムの実質的な運営責任者となったコリン・コレスは次のように語った。
「彼らがかつてジャン・トッド、ロス・ブラウン、ロリー・バーン、そしてナイジェル・ステップニーといったような人物たちを中心とした体制で運営されていたときと、今目にしているものはものすごく違っていると思う」
さらに、モンテゼモーロとは相いれず、常にぶつかり合う関係にあった前FIA会長のマックス・モズレーは、今回のモンテゼモーロ辞任が名門チームであるフェラーリにとっては転機となるかもしれないと考えている。
「実際のところ、フェラーリはジャン(フェラーリの元チーム代表であったジャン・トッド/現FIA会長)が去ったあとは全く別のチームになってしまっていた」
『Reuters(ロイター通信)』にそう語ったモズレーは、次のように続けた。
「もし彼らが再びレースに勝利したいと思うのであれば、別の卓越した管理者を見つけることが必要だよ」
■F1からの撤退はないとフィアット会長
モンテゼモーロが辞任し、大きな転機を迎えたフェラーリだが、ひとつだけ確実なことがありそうだ。それは、フェラーリがF1を撤退することはないということだ。
「モンテゼモーロが私に説明してくれたんだが、我々(フェラーリ)はエクレストンとの間に交わされた契約により、少なくとも2020年まではF1にとどまらなくてはならないらしい」
イタリアの報道陣にそう語ったマルキオンネは、次のように続けた。
「だが、私に言わせればそれはもっと先まで続くことになる。もし私次第だと言うなら、120年は続けるだろうね」