マックス・フェルスタッペンを擁するレッドブルが現在F1で圧倒的な強さを誇っているにもかかわらず、世界的エナジー飲料メーカーが所有するF1チーム内で権力闘争が繰り広げられている可能性があるようだ。
■ホーナーとマルコが対立との噂
噂によると、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーが、昨年10月に死去したレッドブル共同創設者であるディートリッヒ・マテシッツの右腕と称されていたヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)と対立しているという。
ブラジルの『Globo(グローボ)』が報じたところによると、マルコはホーナーだけでなく、マテシッツの死後にレッドブルの新CEOに就任したオリバー・ミンツラフとも水面下で衝突しているという。
■この噂の背後にあるものは?
こうした中、元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、母国ドイツのテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』に今回の噂について次のように語った。
「以前、アルファタウリが売却されるという噂があった。」
「しかし、売却はザルツブルク(レッドブル本社)によって阻止された。それが故ディートリッヒ・マテシッツの意向だったからだ。そして、さらなるサポートが必要だということが決定された」
「クリスチャン・ホーナーはそれを、『もしも私が(アルファタウリを)もっとサポートしなければならないのなら、私はもっと影響力を持たなければならない』と言う機会にしたんだ」
「オーナー一族はもともとF1で2チームを持つことは必ずしも必要ではないという意見だったんだ」
「今私が感じているのは、ホーナーがアルファタウリのテーマを引き継いで、彼らを可能な限り成功させ、どこかの時点でチームを高値で売却するつもりだろうということだ」
そう語ったラルフ・シューマッハは、次のように付け加えた。
「それがすべての背後にある意図だよ」
■ホーナーは角田を評価せず?
さらに、シューマッハによれば、マルコがホンダの支援を受けている角田裕毅をサポートし続ける一方で、「ホーナーは角田がもはや適切なドライバーではないという意見を持っている」という噂もあるという。
実際のところ、角田がアルファタウリと2024年までの新契約を結んでいるにもかかわらず、2026年からホンダがワークスエンジンを供給することになるアストンマーティンへの移籍を考えているという噂が急浮上してきているという事実もある。
噂されているレッドブル内の権力闘争が、角田の今後のF1キャリアに影響を及ぼす可能性もないとは言えないだろう。
■マテシッツを失ったレッドブル内に変化も?
「マルコは常にザルツブルクとの間で、チームの利益、そしてディートリッヒ・マテシッツの利益のつなぎ役を務めていたんだ。彼はアドバイザーだったんだ」とラルフ・シューマッハは続けた。
「ホーナーはマルコによって雇われたが、ザルツブルクで論争がなかったわけではないんだ」
「(レッドブルの)タイの株主が少しばかり違う興味を持っていることを忘れてはならないし、ホーナーはザルツブルクでは難しい立場にあったこともあって、現在はよりタイの方に傾いているようだ」
絶対的権力を持っていたオーナーが逝去したような場合、その後その企業内の足並みが揃わなくなるのはよくあることだが、どうやらレッドブルもその例外ではなさそうだ。
■ホーナーはやり過ぎない方がいいとラルフ・シューマッハ
ラルフ・シューマッハは、マルコが近いうちにF1から追い出されるかもしれないという噂がささやかれているのはこの権力闘争が原因ではないかと示唆しているが、この状況をできるだけ早く解決することがレッドブルの利益につながると考えている。なぜなら「動揺がパフォーマンスを低下させる」ことにつながるからだ。
「ホーナーはこれ以上彼にプレッシャーをかけない方が賢明だろう。彼にとっていい結果にはならないだろうからね。マルコとフェルスタッペンのつながりを過小評価するわけにはいかないよ」
そう警告したラルフ・シューマッハは、次のように付け加えている。
「マルコは非常に早い時期から彼を引き上げたし、常に彼の味方だ。聞くところによれば、フェルスタッペンはそれ(マルコ追放)を容認しないだろうし、むしろホーナーなしでやりたいんじゃないかな」
元F1ドライバーであり、法学博士号も持つマルコだが、すでに80歳という高齢でもある。
ラルフ・シューマッハは、マルコが「もう世界中のサーキットを旅して回るストレスを抱えたくはない」としてF1の第一線から身を引くことが最終的なこの問題の落としどころになるのではないかと推測しているようだ。