F1公式タイヤサプライヤーを務めるピレリの自動車レース責任者が、現在のF1用フルウエットタイヤは「役に立たない」と認めた。
先週末の土曜日(29日)にスパ・フランコルシャンで行われた今季のF1第13戦ベルギーGPのスプリントはウエットコンディションとなり、セーフティカー先導のもとでレースがスタートされた。
こうした場合、現在のルールではドライバーたちは路面の水量が多いときに用いられる深溝のウエットタイヤを装着することが義務づけられている。
しかしスパでのスプリントでは、4周にわたって先導していたセーフティカーがコースから退くと同時に、半数のドライバーがピットに戻り、水量が少ないときに用いられる浅溝のインターミディエイトタイヤに交換。そして、このスプリントで勝利を飾ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を含む残りのドライバーたちも1周を終えたところで全員がピットインし、インターミディエイトタイヤに交換している。
■ウエットタイヤは「使えない」とラッセル
メルセデスのジョージ・ラッセルは、レース後にピレリの雨用タイヤについて次のように語った。
「フルウエットは全然使えないよ」
「本当に、本当によくないんだ。あのタイヤはインターミディエイトよりも1周あたり6、7秒は遅いよ」
「このタイヤを使いたいと思うときがあるとすれば、インターミディエイトだとアクアプレーニングが発生するときくらいさ。だから、かなり改善する必要があるよ」
■セーフティカー先導時用タイヤなら意味がない
興味深いことに、ピレリのF1プロジェクトを率いるマリオ・イゾラも、このラッセルのコメントに同意しているようだ。
イゾラによれば、ピレリは最近ウエットタイヤのパフォーマンスを向上させたものの、大きな問題は、路面水量が非常に多いときにはレースディレクターがドライバーたちコース上で戦わせることにかなり消極的になってきていることだという。
「あれはセーフティカー導入時用のタイヤなのだろうか?」
ウエットタイヤに言及しながらそう語ったイゾラは、次のように続けた。
「我々は常にドライバーの視点に立っている。そして、それはチームやFIAとともに取り組んでいる問題なんだ」
「ドライバーたちがフルウエットでレースできるように、タイヤが発生する水煙を軽減できるものを探し続けるという考えであれば、2つの製品(インターミディエイトとウエット)を維持すべきだ。
「しかし、レインタイヤがセーフティカーの後ろでしか使えないとしたら、そのタイヤは無用だよ。そうであれば、私はドライバーたちと同じ意見だ」
■ピレリはすでに新たな雨用タイヤも検討中
そう語ったイゾラは、次のように付け加えた。
「我々は、どちらの方向に進みたいのか、どの製品がF1に必要なのかを決める必要がある」
イゾラは、ピレリがすでに「スーパーインターミディエイト」あるいは「インターミディエイト-プラス」とも言うべきタイヤのアイデアを検討していることを先週末のスパで明らかにしている。