先週末にバルセロナ・カタルーニャ・サーキットで行われたF1スペインGPではレッドブルのマックス・フェルスタッペンが今季5勝目をあげ、3年連続でのドライバーズタイトルに向けて大きく前進した。
■マシンコンセプト変更の効果?改善を見せたメルセデス
そのスペインGP決勝で、フェルスタッペンと共に表彰台に上ったのはメルセデスのルイス・ハミルトンとジョージ・ラッセルだった。レッドブル以外のチームのドライバーが2人とも表彰台に上ったのは今年初めてのことだ。
これにより、コンストラクターズランキングではフェルナンド・アロンソを擁するアストンマーティンを逆転して2番手に浮上したメルセデスだが、これは前戦モナコから使用している新コンセプトによるマシンがうまく機能しているためだと考えていいかもしれない。
■慌てる必要はないとレッドブル首脳
しかし、レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、“ノーサイドポッド”とも呼ばれた独特なマシンコンセプトを諦めて、レッドブルに似たサイドポンツーンを導入したメルセデスF1マシンが今後自分たちにとって脅威となるとは考えていないようだ。
「彼らは大きな一歩を踏み出し、とてもいいラップタイムを刻んでみせた」
そう語った80歳のオーストリア人は、次のように付け加えた。
「だが、我々がまだ比較的前にいる限り、それに対しては冷静でいられるよ」
■どうなる?今後の開発競争
スペインGP決勝では、今年の表彰台の常連であり、地元の英雄であるアロンソが今季ワーストの7位に沈み、フェラーリもカルロス・サインツが5位、シャルル・ルクレールに至っては11位と苦戦を強いられてしまった。
そうした中で、メルセデスが復調の兆しを見せたのは、今後のシーズンに向けて期待を抱かせるものだと言えるかもしれない。
それでも、スペインGP決勝で勝利したフェルスタッペンと2位ハミルトンとの間には24秒もの差がついてしまっていた。実際にメルセデスが本当の意味でレッドブルのライバルとなれるかどうかは、今後の開発の進め方が大きなカギを握ることになるだろう。
■風洞時間の影響は心配していないレッドブル
レッドブルは、2021年シーズンのバジェットキャップ違反に対するペナルティーも含めて、今シーズン中の風洞時間が大きく削減されている。これにより、シーズンが進むにつれて開発時間のアドバンテージを生かしてライバルたち、特にメルセデスがレッドブルとの差を縮めてくる可能性もある。
しかし、マルコは、その心配はしていないようだ。
「それに関しては、我々は楽観しているよ」
マルコはそう語ると、次のように付け加えた。
「現在進行中のものは長い時間をかけて計画されてきたものなんだ。我々はコンマ2、3秒前にいる。それはかなり大きな差だよ」
フェルスタッペンも、メルセデスがスペインGPで明らかな進歩を見せたことをあまり重大視していないようだ。
「ほかのチームは好きなだけ僕らのことをコピーすることができる。僕は気にしないよ」
イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』にそう語った25歳のフェルスタッペンは、次のように付け加えた。
「僕たちのチームも改良パーツを持ち込み続けるし、僕たちだってどんどんうまくやれるようになっていくからね」
■レッドブルの全レース制覇を阻みたいメルセデス
メルセデスF1チームをCEO兼代表として率いるトト・ヴォルフは、レッドブルが2023年のグランプリをすべて制覇する可能性があると認めている。
「それはF1にとっていいことではないから、私はそうならないことを願っている。だが、彼らはそれが可能なマシンを持っている」
母国オーストリアの『Osterreich(エステルライヒ)』紙にそう語った51歳のヴォルフは、次のように付け加えた。
「我々には、それに対抗するための最高のドライバーたちがいる。だが、それ(レッドブルの完全制覇)を阻むためには自分たちのマシンをいいものにしていく必要がある」。