今週末にイモラ・サーキットで開催される予定だった2023年F1第6戦エミリア・ロマーニャGPがキャンセルされたが、現在の同地域の状況を鑑みれば、それしか選択肢がなかったようだ。
■一部が水没したイモラ・サーキット
エミリア・ロマーニャ地方を襲った大雨により、『アウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ』が正式名称となるイモラ・サーキットもその影響を大きく受けてしまった。
16日(火)にはF1チーム関係者たちに対してパドックから避難するよう指示が出され、水曜日にサーキットに戻ることがないよう要請されていたことが明らかとなっている。これは、サーキットの一部がかなり深刻に浸水し始めていたとともに、すぐ側を流れるサンテルノ川が決壊すれば、より甚大な被害が生じる可能性もあったためだ。
アルピーヌのエンジニアであるカレル・ルースは、ベルギーの通信社『Sporza(スポルザ)』に次のように語った。
「我々のパドックは水没していないが、F2とF3のパドックは水に浸かっている」
「現時点では、我々のトラックもここを出られない。現場にいるスタッフたちも立ち往生している」
「全てを梱包して次のレースが行われるモナコに送るために、サーキットに戻れるようになるのを待たなければならない」
■開催準備はすでに整っていたが……
イモラのマルコ・パニエリ市長は、イタリアの『Sky Sports 24(スカイ・スポーツ24)』に次のように語っている。
「非常に厳しい状況だ」
「今では丘陵地帯で土砂崩れが起こる危険もある。F1はこの困難な状況を理解してくれたよ」
「我々はすでにレース週末をスタートさせることができるよう準備を整えていた。しかし、安全、輸送、コミュニケーション等の観点から、この苦渋の決断が下されたんだ」
イタリアの副首相兼インフラ担当大臣であるマッテオ・サルヴィーニは次のように付け加えている。
「今はこの緊急事態を優先するだけでなく、大変な被害を受けたこの地域に不必要な交通が来るのを防がなければならない」
実際のところ、『Reuters(ロイター通信)』などによれば、今回の洪水で現在判明しているだけでも9名が亡くなり、1万人以上が非難を余儀なくされているという。そうした状況の中で、一種のお祭り的イベントであるF1を開催することは住民感情を考えても無理だったのは間違いないだろう。
■F1チームからは何の異論も出なかった
エミリア・ロマーニャGPの開催キャンセルを決定したF1最高責任者(CEO)のステファノ・ドメニカリも、17日(水)にイモラ・サーキットで『Sky Sports 24(スカイ・スポーツ24)』に次のように語った。
「火曜日の夕方に私が到着したとき、ほかの選択肢がないことは明らかだったよ」
「グランプリのようなイベントは、人々、輸送、サービスが関わる複雑なものだ。サーキットの準備はできていた。だが、それよりも優先すべきことがあったんだ」
イモラで生まれ育った58歳のドメニカリはそう語ると、次のように付け加え、F1チームたちも全て今回のエミリア・ロマーニャGP開催キャンセルの決断を支持したことを明らかにしている。
「私は全てのチームに知らせたが、誰も何も言わなかったよ」。