セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が、ひょっとしたら、近い将来アメリカのインディカーへ転向する可能性があるかもしれない。
■出遅れたアストンマーティンとベッテル
レッドブル時代に4度F1チャンピオンに輝いたベッテルだが、今年は新型コロナウイルス感染で開幕2レースを欠場したこともあってか、ここまでの3レースではアストンマーティンの2022年型マシンにまだうまく適応することができていないように見える。
しかし、アストンマーティンの2022年型マシンの競争力が高くないのも事実であり、チームはベッテルに速いマシンを与えるために来週末にバルセロナで行われる第6戦スペインGP(22日決勝)には、“Bスペック”となるマシンを投入する計画だと伝えられている。
これに関して、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は次のように書いている。
「もしかしたらフェラーリのコピーになるかもしれないが、いずれ分かるだろう」
■アメリカにはロード・アメリカのようないいサーキットがあるとベッテル
より速いマシンを待つ一方で、ベッテルは先週末に今季の第5戦として初開催されたF1マイアミGPの舞台となったマイアミ・インターナショナル・オートドロームについて批判的なコメントを行っている。
「間違いなく、レースとドライビングのスリルを味わうには、マイアミの建設に費やされたお金を使ってロード・アメリカのような素晴らしい場所の基準を簡単に引き上げることができただろうね」
インディカーやNASCARなど、多くのアメリカンレースシリーズの戦いの舞台となっているウィスコンシン州エルクハートレイクにあるサーキットに言及しながらそう語ったベッテルは次のように付け加えた。
「ちゃんとしたサーキットに行きたいよ」
■レイホールからベッテルにインディカーテストのオファー
このコメントに即座に反応したのが、インディカーの現役ドライバーであるグラハム・レイホールだ。33歳のレイホールはソーシャルメディアを通じて、ベッテルにロード・アメリカで自分たちのマシンをテストするよう招待したのだ。
さらに、グラハムの父でありレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの共同オーナー兼代表であるボビー・レイホールも「セブ、君が望むなら交渉成立だよ」と付け加えている。
インディカー・シリーズで3度年間チャンピオンとなった実績を持ち、インディ500での優勝経験も持つボビー・レイホールは、かつてF1でジャガー・レーシングのチーム代表を務めていたことでも知られる人物だ。
レイホールからの招待について質問されたベッテルは、次のように答えている。
「検討してみないとね。だけど、(ロード・アメリカは)素晴らしいサーキットだから、考えてみようかな」
■ベッテルにはレース以外の将来もあるとベルガー
一方、ベッテルにはほかのオファーもあるようだ。
かつてマクラーレンやフェラーリで活躍した元F1ドライバーであり、現在はDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)の代表を務めるゲルハルト・ベルガーは、次のように語った。
「セバスチャンをパートナーにしたいよ」
「彼はクレバーな男だし、将来的にはドライブ以外の仕事も必要になってくると思うよ」
2007年の第7戦アメリカGPでBMWザウバーから欠場したロバート・クビサの代役としてF1デビューを飾ったベッテルだが、その年の第11戦ハンガリーGP以降はトロロッソ(現アルファタウリ)のシートを獲得。2008年にはトロロッソのフルタイムドライバーとなったベッテルだが、この時期にトロロッソの共同オーナーを務めていたのがベルガーだった。
今年、ベッテルが今後どのような巻き返しを見せるのか? あるいは、もはやF1には自分の居場所がないという決断をしてしまうことになるのか? いろんな意味で、ベッテルとアストンマーティンの今後の戦いぶりからも目が離せなくなりそうだ。