かつて4度F1王者となったF1トップドライバーのひとりであるセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が、F1は今後10年以内に消滅するリスクを抱えていると警鐘を鳴らした。
ベッテルは、スイスの『Tages-Anzeiger(ターゲス-アンツァイガー)』紙とのインタビューにおいて、F1の技術レギュレーションとレースカレンダーはさまざまな面において社会的、環境的な変化に追い付いていないと次のように語った。
「カレンダーを計画する上で、財政的利益を最優先させるべきではないんだ」
「僕たちは東から西へ、あるいは北から南へと飛び回るのではなく、最も近い場所に行くべきなんだ」
「スタンドやパドックでのプラスチック使用を禁止することによっても大きな違いを生むことができる」
「もちろん、それで世界を救うことはできない。だけど、もしもF1が世界の発展や課題、問題に適応しなければ、今は観客が増加しているにせよ、今後10年のうちには追い抜かれたり、消滅したりする危険性があるよ」
ベッテルは、自分がF1デビューを飾った2007年以降、F1が変化を遂げてきたことは認めているものの、それだけでは不十分だと考えている。
「時間は過ぎていくものだけど、奇妙なことに、F1では時間が止まっているみたいだ」
「僕たちのスポーツはいろんな意味で速いし進歩的だ。テクノロジーやそれに関連する革新のようにね。だけど、アイデアに関して言えば、僕たちは必ずしもパイオニアではないよ」
F1が2014年にハイブリッド方式の現行1.6リッターV6エンジンを導入した際には、ベッテルはそれ以前に使用されていた化石燃料を爆発させることで大音響を発生させるV10エンジンやV12エンジンに戻すべきだとの主張すら行っていた。
そんなベッテルが最近では環境問題に目覚め、自らサーキットの観客席でプラスチックゴミの回収作業を行うようになったことにとまどいを覚えているファンも少なくないようだ。
そうした変化について質問された34歳のベッテルは次のように答えている。
「僕は歳をとっただけだと思う。親になれば、見方や考え方が変わるものだし、責任を負い、成長していくんだ。それに、僕はもともと好奇心が旺盛だし、ほかの意見にも耳を傾けることができる」
「変化というものは、いいものが失われるのではないかという恐怖と結びつくこともある。だから、F1関係者は必ずしも変化を未来へのチャンスと捉えていないことにも僕は気付いているよ」
「対外的には、F1は常にオープンなコミュニケーションをしているように見せたいと思っている。だけど、正直なところ、内部に向けてもそうする勇気があるかどうかは疑問だね」
そんなベッテルは、みんなはもっとスウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリの言葉に耳を傾けるべきだと次のように語っている。
「彼女はまさに全世界のロールモデルだし、とりわけ、年配の男性はもっと彼女の話を聞くべきだよ」
ベッテルは、トゥーンベリが目指しているものが、燃料を燃やすF1とは相反するものであるのは確かだと認めつつ、次のように続けた。
「確かに、僕たちは現在、化石燃料を燃やしている。だから、こうした議論においては、僕たちがほかのスポーツよりもとりわけ目立つことになる」
「でも僕は、政治家、産業界、企業、そして個人も、全員が社会に対して大きな責任を負っていると信じている」
そう主張したベッテルは次のように付け加えた。
「F1だって変わらなければならない。それ以外に道はないよ」