F1公式タイヤサプライヤーであるピレリの自動車レース責任者を務めるマリオ・イゾラが、バクー市街地サーキットで行われたF1アゼルバイジャンGP決勝でマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がバーストしたタイヤを蹴ったときの気持ちは「全くよく分かる」と語った。
ピレリがアゼルバイジャンに持ち込んだ3種類のタイヤのうち一番硬いハードタイヤに履き替えて順調にトップを快走していたフェルスタッペンだったが、51周で行われたレースが残り5周となったところで左リアタイヤが突然バースト。コントロールを失ったフェルスタッペンはコース右側のウォールにクラッシュし、そこでリタイアとなってしまった。
これでほぼ手中に収めたかと思われた優勝とルイス・ハミルトン(メルセデス)とのポイント差をさらに広げる可能性を失ったフェルスタッペンは怒りのあまりコース上に止まった自分のF1マシンの左リアタイヤを蹴飛ばしていた。
その時点ではハミルトンが2番手を走行しており、ランキングを一気に再逆転される可能性が高かっただけにフェルスタッペンの悔しさは相当なものだったはずだ。
そのフェルスタッペンの怒りについてフランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』から質問を受けたイゾラは次のように答えた。
「それは全くよく分かるよ」
「誰も時速300キロメートル以上での事故を経験したいとは思わないからね」
イゾラはアゼルバイジャンでのレース終了後すぐに、今回のフェルスタッペンのタイヤバーストはコース上に落ちていたデブリ(破片など)が原因となったものだろうと語っていた。だが、現在本格的な調査が行われているところだという。
「もし原因がデブリであった場合は、今後同じようなことが起こることを避けるためにどういう手が打てるかを考えなくてはならない」
フェルスタッペンのタイヤバーストは恐らくその前にクラッシュしていたランス・ストロール(アストンマーティン)のマシンの破片を踏んでいたことによるものではないかと推測しているイゾラはそう述べると次のように続けた。
「そうした鋭利な物体に耐えられるタイヤを設計することは事実上不可能なんだ」
「もしデブリによるものではなければ、我々としても必要な措置を取らなければならない」
「ミラノにある我々の研究所には、顕微鏡でチェックを行うことができるツールがある」
「それによって、そのカット(タイヤの亀裂)が外的要因によるものか、そうではないのかが分かるはずだ」
そう語ったイゾラだが、バーストしたタイヤから本当の原因を探し出すのはかなり困難なことであるのは事実だと次のように付け加えた。
「可能な限り速やかにそれを行っているところだ。我々の仕事で最も難しいのは、アクシデント後のタイヤのダメージを除外することなんだ。タイヤがフロアやサスペンションに接触した場合にもダメージを受けるからね」