元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、7年連続となるF1タイトル独占をほぼ確実としている最強F1チームのメルセデスの強さは2021年も変わらないものの、2022年にはチームが弱体化しそうな気配があると考えている。
2020年F1シーズン開幕前にはマックス・フェルスタッペンにF1史上最年少チャンピオン記録を更新させるつもりだと豪語していたレッドブルだが、いざシーズンが蓋を開けてみれば今年も絶対王者のメルセデスが圧倒的な強さを発揮。2014年以降7年連続となるドライバーズタイトル、コンストラクターズタイトル獲得をほぼ確実なものにしている。
本来、F1では2021年に新たな技術レギュレーションを導入する予定となっていたが、新型コロナウイルスにより財政的打撃を受けたチームも多く、開発コストを削減するために2021年には原則として2020年型F1マシンを使用し、その追加開発も厳しく制限されることになっている。
こうしたことから、2021年も現在のF1チームの力関係が大きく変化することは考えづらく、2022年にメルセデスが8年連続でのタイトル独占を果たすのも間違いないだろうと考えている者が多い。
先週末に行われたF1ポルトガルGPではメルセデスのルイス・ハミルトンがこれまでミハエル・シューマッハが持っていたF1歴代最多勝記録を更新する92勝目をあげたが、そのミハエルの弟であるラルフ・シューマッハも2021年も今年と同じ光景が展開されることになるだろうと『Sky Deutschland(スカイ・ドイツ)』に次のように語った。
「来年も今の形が変わることはないだろう」
「そうなるには、メルセデスがあまりにも強すぎるよ。彼らは現時点ではその本当の力を示してさえいない。彼らにはその必要がないんだ」
「だが、新ルールが導入される2022年には変化が生じる可能性もある」
パワーユニットとも呼ばれるハイブリッド方式の現行F1エンジンが導入された2014年以降圧倒的な強さを誇っているメルセデスだが、ハミルトンという卓越したドライバーがいること以外にも2つの成功要素をメルセデスは持っていたとラルフ・シューマッハは考えている。
「ひとつには、メルセデスのエンジンが何年にもわたってライバルがいない状態だったことだ。だが、もうひとつの理由はチームを形成する主要人物たちが団結していたことだ」
ラルフ・シューマッハが言及した主要人物たちとは、チーム代表を務めるトト・ヴォルフやエンジン開発責任者を務めてきたアンディ・コーウェルなどを指すのは間違いないだろう。
だが、コーウェルはすでに今年の6月いっぱいで第一線から退いており、ヴォルフの方も2021年以降どういう形でメルセデスF1チームに関わっていくことになるのかまだ明らかとなっていない。
ヴォルフに関しては、個人的に来季からF1プロジェクトを開始することになっているアストンマーティンの株主となったことも明らかとなっており、メルセデスを離れてそうした新プロジェクトに合流する可能性もあると考えられている。
また、コーウェルに関しても2021年にはヴォルフ同様アストンマーティンのプロジェクトに加わる可能性もあるとのうわさがある中、最近ではホンダが去るレッドブルにエンジンのアドバイザーとして加入するのではないかとのうわさもささやかれるようになっている。
「彼らにはいいオファーがあるだろうね。アンディ・コーウェルを失うのは大きいよ。それに、ほかにも違うポジションでやりたいと思う者もいるかもしれないし、トトにもそういう類いの変化が起き始めているのが分かる」
かつてウィリアムズやトヨタで活躍した45歳のラルフ・シューマッハはそう語ると次のように付け加えた。
「こういう主要人物たちを失うことになれば、間違いなくメルセデスは弱体化するだろうね」