バルセロナで4日間にわたって行われた今年最初のF1公式プレシーズンテストが終わったが、そこでひときわ大きな注目を集めたのがF1デビュー2年目にして名門フェラーリのシートを獲得したシャルル・ルクレールだったのは確かだろう。
■プレシーズンテストでも速さを見せたルクレール
テスト2日目にフェラーリの2019年型車SF90のステアリングを握ったルクレールは、前日のテストを担当したセバスチャン・ベッテルと比べても遜色のないタイムで堂々と順位ボードの一番上にその名前を刻んでいる。
フェラーリのドライバーアカデミーに所属していたルクレールは、2018年にザウバーでF1デビューを飾ると見事な活躍を見せ、今季はキミ・ライコネンの後任としてフェラーリに迎え入れられた。
その21歳のルクレールに関しては、4度F1王座についたことがあるチームメートのベッテルを苦しめる存在になるだろうと考えている者も多い。
レッドブル・ホンダの事実上のナンバー1ドライバーであるマックス・フェルスタッペンもそのひとりだ。
■ルクレールはライコネンより速いとフェルスタッペン
「僕もそう思うよ。彼はすごく速いし、知的でもあるからね」
そう語ったフェルスタッペンは次のように付け加えた。
「確かに、彼はレース距離を戦う上での経験ではベッテルに及ばないかもしれない。だけど、いずれにしても彼はキミ・ライコネンよりは速いはずだよ」
■まだ自分は発展途上だとルクレール
そうしたコメントが多く紹介される中、ルクレールはバルセロナにおいて次のように語った。
「みんなは僕がまだ2年目だってことを忘れちゃならないよ」
「この役割を担うには、僕にはもっと成長するための時間が必要だよ」
「僕は初優勝を狙ってオーストラリア(開幕戦)に行くわけじゃない。僕の目標はいい仕事をすることさ」
大きなプレッシャーに対してどのように対処していくつもりなのかと尋ねられたルクレールは次のように答えている。
「フェラーリは世界中で最もビッグなチームだし、偉大な存在だ。だけど、レースをしているときはそんなことは考えないよ」
■注目が集まるベッテルvsルクレール
しかし、昨年通算5回目のF1チャンピオンとなったルイス・ハミルトン(メルセデス)もルクレールの活躍を予想している。ハミルトンは今年のルクレールはF1デビューを飾ったときの自分と同じような状況を迎える可能性もあると示唆している。
マクラーレンの秘蔵っ子と言われていたハミルトンは2007年にマクラーレンでF1デビューを飾っている。そしてそのときのチームメートは2005年と2006年にルノーで2年連続F1チャンピオンとなったフェルナンド・アロンソだった。
だが、デビューしたばかりのハミルトンはアロンソと互角以上の戦いを展開。それが原因となってチームの関係が悪化したアロンソはわずか1年でマクラーレンとの契約を解除したという経緯がある。
ひょっとすると、そのときと同じように今年はベッテルとルクレールの熾烈なチーム内バトルが展開される可能性もありそうだ。
■フェラーリはベッテル優先を宣言
しかし、そうしたことになってお互いにポイントを奪い合う展開となる可能性を避けるためか、今年からフェラーリのチーム代表を務めることになったマッティア・ビノットはベッテルがナンバー1ドライバーだと宣言。チーム内にはっきりとした序列を作ることでタイトル獲得を実現するとしている。
見方を変えれば、そのビノットのコメントの裏にはルクレールのプレッシャーを軽減するという目的もあるのかもしれない。
ルクレールは次のように締めくくっている。
「僕はシーズンをいい形でスタートできるよう頑張るつもりだよ。そして、もしマッティアが2人の速いドライバーを抱えて悩むようなことになれば、それは僕が自分の仕事をうまくこなしているということになるだろうね」