F1公式タイヤサプライヤーであるピレリがメルセデスからの要請に基づいて2018年用タイヤの設計仕様を手直しすることになると報じられている。
■ピレリにタイヤ仕様手直しを求めたメルセデス
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、今年の2月下旬から3月上旬にかけてスペインのバルセロナで行われたF1公式シーズン前テストを経て、4年連続F1チャンピオンチームとなったメルセデスがピレリに対してタイヤの仕様変更を求めていたようだ。
その理由は各チームのタイヤに極めて多くのブリスターが発生したためだという。ブリスターとはタイヤの熱が上がり過ぎたときにタイヤ表面に発生する気泡のことだ。当然ながらブリスターが発生すればタイヤが本来のグリップを発揮することはできなくなる。
■再舗装サーキットではブリスター発生リスクが増大
本来まだ気温が低い時期に行われるバルセロナテストでそれほどブリスターが発生することは考えにくいのだが、2018年仕様ドライタイヤが昨年のものよりも一段階ずつ軟らかめに設計されていることや、バルセロナ-カタルーニャ・サーキットが全面再舗装されて路面状態が昨年とは大きく変わっていたことにより想定以上のブリスターが発生したものだと考えられている。
ピレリのレース責任者であるマリオ・イゾラも、今回のブリスター発生にはバルセロナの路面の影響が大きかったのだと認め、次のように語った。
「新しいアスファルトは黒くてなめらかであり、これまでよりも高いグリップを発生する。これがオーバーヒートを引き起こす原因となるんだ」
メルセデスではピレリに対し、その問題の解決策としてバルセロナのようなサーキットに持ち込まれるタイヤに関してはラバー層の厚みを減らすことが有効ではないかと提案したのだという。
■今後数か所で別仕様タイヤを供給
これに関して、イゾラは次のように付け加えた。
「いずれにせよ、我々はそうしていただろう」
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、ピレリは今後バルセロナ(スペインGP/5月13日決勝)、ポール・リカール(フランスGP/6月24日決勝)、シルバーストン(イギリスGP/7月8日決勝)といった最近路面の再舗装が行われたサーキットには通常のタイヤよりもラバー層の厚みを0.4mm薄くしたものを持ち込むことになるようだ。
そして、これによって車重は1kgほど軽くなると見られている。
■今回の仕様変更は緊急的安全対策として実施
現在のルールでは、ピレリがシーズン中にタイヤの設計仕様を変更する場合には全F1チームのうち70%以上がそれに同意することが必要だとされている。
だが、今回ピレリは緊急的な安全対策という名目でこの仕様変更に踏み切ることになるという。
■不快感を示すライバルチームたち
だが、メルセデスの要請に基づいてピレリがタイヤの仕様を変更することについてライバルチームの中には快く思っていないところもあるようだ。
マクラーレンの関係者はこの件について次のように語っている。
「我々にはブリスターの問題はないよ」
また、レッドブルのダニエル・リカルドも次のようにコメントしている。
「僕たちのクルマはメルセデスよりもタイヤにやさしいんだ」
さらに、あるチームの代表は次のように不快感を表明したという。
「メルセデスが問題を抱えたからといってどうしてタイヤを変えなくてはならないんだい?」