ドイツ出身の元F1ドライバーであるハンス-ヨアヒム・シュトゥックは、今季に向けて行われたレギュレーション変更はF1を好ましくない方向へと向かわせるものだと考えている。
■空力強化でスピードアップが図られた2017年F1カー
近年のF1ファン減少傾向を受け、もっと速いF1を復活させるべく今シーズンからはダウンフォースが強化され、よりグリップの高いワイドタイヤを装着する新世代F1カーが今週末に行われる2017年のF1開幕戦で正式にレースデビューを飾ることになっている。
この新たなF1マシンは、バルセロナで行われた公式シーズン前テストですでにその速さを示しており、ほとんどのクルマが昨年のスペインGP予選でのポールポジションタイムをしのぐラップタイムを刻んでみせていた。
■目的はより運転が困難なF1カーにすることだったが・・・・・・
昨年までウィリアムズのチーフテクニカルオフィサーを務めていたパット・シモンズは、そのルール改正についてフランスの『L’Equipe(レキップ)』に次のように語った。
「このアイデアはバーニー・エクレストン(前F1最高責任者)が提案し、ストラテジー・グループ(主要F1チームなどによって組織された意思決定機関)が承認したものだ」
「これは、17歳でF1デビューを飾り、優れた成績を残すようなことをもっと難しくするためのアイデアだった。だが、実際のところ、若いドライバーたちも新しいクルマにうまく対応できているようだ」
■懸念されるオーバーテイクの減少
シーズンが進むにつれ、昨年よりも1周あたり5秒もラップタイムを短縮できるサーキットも登場するだろうと考えられている今年のF1カーだが、スピードがアップされる反面、コース上でのオーバーテイク(追い抜き)はこれまで以上に難しくなるだろうとの見方があるのも事実だ。
シュトゥックも、今回のルール変更は間違いだったとドイツのビジネス誌『Sponsors(スポンサーズ)』に次のように語った。
「コストだけの話ではない。空力強化はレースを退屈なものにするだけだ」
「ファンは、本当のオーバーテイクを見ることができる本物のモータースポーツを見たいと思っているんだ。折り畳み式のウイングのような意味のない技術革新ではなくね」
■どうなる?DRS問題
シュトゥックが言及しているのはDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)のことだが、新F1オーナーのリバティ・メディアによってF1モータースポーツ責任者に指名された元エンジニアのロス・ブラウンもいつかはこうしたシステムを禁止したいとの考えを表明している。
一方で、レギュレーション変更によってこれまでよりも追い抜きが難しくなると見込まれている今年のF1においては、いくつかのサーキットにおいてDRSがこれまで以上の働きを見せることになるだろうとも言われている。
ともあれ、24日(金)に開幕する2017年F1オーストラリアGP(26日決勝)で、新しいF1のパフォーマンスやそれがレース展開に及ぼす影響などが見えてくることになりそうだ。