今年、実際のF1エンジンの音は小さくなったかもしれない。だが、F1の新たなV6ターボエンジンは別の意味で耳をつんざくほどの喧騒(けんそう)を招くことになってしまった。
F1オーストラリアGPの主催者であるロン・ウォーカーは、昨年までのV8エンジンによる雄叫(おたけ)びが失われたことで、これはF1側による契約違反であるとし、契約破棄も見据えてゆくと宣言した。
これに対し、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)の関係者は、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に対し、「主催者との契約の中に(エンジンの)音量下限値などは明記されていない」と語った。
その関係者はさらに、この問題がファンをアルバート・パークから遠ざけてしまったのだというウォーカーの意見に対しても、「来なかった人たちはそのエンジン音を聞いていないはずだ」とやり返している。
だが、F1の新エンジンの音が小さくなったことが、今後の契約に影響を与える可能性も残されている。
セパン・インターナショナル・サーキットの代表者であるラズラン・ラザリは、地元の『New Straits Times(ニュー・ストレイツ・タイムズ)』紙に対し、この新しいエンジンは確かに「レースの雰囲気に影響を及ぼすだろう」と次のように語った。
「それゆえ、われわれとしてはこの問題がどのように進展するのか様子を見ていきたいと思う」
マレーシアの現在のF1開催契約は、2015年で満了することになっている。
また、最年少で4年連続F1チャンピオンとなる偉業を達成したセバスチャン・ベッテル(レッドブル)はもともと新たなエンジンに対しては否定的な意見の持ち主だった。そのベッテルは、28日(金)に2014年のF1カーの音は「最低」だと放送禁止用語を用いて表現するなど、新たなF1エンジンに対する批判をさらにヒートアップさせている。
ベッテルは、ドイツの『SID通信』に対して次のように付け加えた。
「それに、電池も本来あるべきところに入れるべきだよ。携帯電話の中にね」
だが、レッドブルでは少なくともこのエンジン音問題の解決策を持っているかもしれない。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは次のような考えを示した。
「もしターボの羽根を変えれば、いい音がするようにはなるだろうね」
だが、ウィリアムズのフェリペ・マッサは、F1はまたこの新たな形に慣れてゆくことが必要なのだと考えている。
マッサは、ブラジルの『Globo(グローボ)』に対して次のように語った。
「何年か前に、彼ら(FIA)がエンジンを(2014年から)変えるという決定をしたとき、最初にみんなが言ったのは、音が変わってしまうということだった」
「もう今となっては遅すぎるよ。いろんなことを試すことはできるかもしれないけれど、V8みたいな音に変えることは不可能だよ」
「彼らは、それよりも新たなテクノロジーを取りいれることのほうが正しい方向性だと考えたんだ。だから、今のようなことになったというわけだよ」、とマッサは付け加えた。