F1の世界で日にひに激しさを増す「ペイドライバー」についての議論にジャック・ビルヌーブが加わった。
スポンサーや裕福なコネを持ったドライバーが多いのは今に始まったことではないが、F1の参戦コスト増加と経済の停滞が重なったこともあり、この数年は本当に才能のあるドライバーがF1から閉め出されるようになってしまった。
「マクラーレンだって同じ道を歩んでいる、これはマズイよ」と語るのは1997年のF1世界チャンピオンであるビルヌーブだ。この発言が億万長者のカルロス・スリムに後押しされたセルジオ・ペレス(マクラーレン)のことを指していることは明らかだとドイツ紙『Bild(ビルト)』が伝えている。
今週、ビルヌーブと同じく「純粋派」のマーク・ウェバー(レッドブル)は、ペイドライバー全盛のF1でも才能を発揮している新しいドライバーたちを称えている。
ウェバーはウィリアムズのバルテリ・ボッタスの名前を挙げたが、ビルヌーブはボッタスに関しては意見が異なる。
「チームが“ボッタスに満足している”ってコメントしているけど、最悪だよ」
「言っちゃ悪いけど、11位から16位の間で完走したって決していい仕事をしているとは言えない。そんなものは彼が連れてきているスポンサーを傷つけないためだけに出しているコメントじゃないか」
「チームがF1のイメージを壊していっているんだよ、日増しにね」
実際ビルヌーブは、F1がすでに何をしていいのか分からない状態に陥っていると考えている。
「可能性の果てまで、いつも限界ギリギリで、テクノロジーと技術を極限まで高めて戦っていた。それでも筋が通っていた。昔のF1はそういうヒーローであふれていたよ」
「F1は反対側に向かって進んでしまったんだ。お金はまだ湯水のように使われているけれど、そこにもう論理はないんだ」
「エンジンは1シーズンに5基まで、タイヤメーカーは1社だけ、数多くの規制とドライバー補助装置、“エコな”方針など、これはF1じゃなくてル・マン耐久レースなのかもしれないね」
ビルヌーブは、F1で財政が成り立たないチームは解散してしまえばいいと思っており、経営状況の良いトップ5、6チームがそれぞれ3、4台走らせればいいと考えている。
「そうなれば最高だね。例えばフォース・インディアは3台出走して、1台1台に別のスポンサーが付いているとかさ?」
そうなればF1はアメリカのインディカーやNASCARのようになると考えられるが、ビルヌーブは「アメリカでやっていることがすべて悪いとは限らないだろ」と語っている。
「(1台あたりなら)広告費が安くなるから、スポンサーも見つけやすくなる。そうするとチームオーダーも無くなる。だってスポンサーは自分のマシンの方に勝って欲しいからね」
「マシンの性能だって均衡してくる。そうしたらトップと後続とのギャップが狭まるから、ファンにとってもレースが面白くなる」と、ビルヌーブはアメリカ式のレースの良い点を挙げた。