F1第2戦マレーシアGPで起こったレッドブルの「マルチ21」事件がまたさらに新たな展開を見せている。気が短いことで知られているセバスチャン・ベッテル(レッドブル)だが、11日(木)にチームメートのマーク・ウェバー(レッドブル)に対する謝罪を撤回したのだ。
ベッテルは、F1第3戦中国GPの舞台となる上海において、ドイツのメディアに対して「僕が謝ったのはチームに対してだ。マークにじゃない」と語った。
ベッテルは、チームに対する謝罪の念は今も持っているとしながらも、レッドブルのファクトリーにいる全スタッフに対して謝ったことはやり過ぎだったかもしれないと考えていることをほのめかしつつ、次のように続けた。
「みんなはどうして僕が謝っているのかを本当に理解はしていなかったんだ」
今回のベッテルの変ぼうぶりは非常に驚きだった。以前は後悔の念を表していたベッテルだが、今ではレッドブルからのチームオーダーは聞こえていたものの、その意味を取り違えていたのだと主張している。
「その指示を受けたのは1度だけで、その瞬間僕は混乱してしまったんだ。ドライバーとしては、それでも運転し続けなければならない」
だが、無線交信の記録は、ベッテルは何度も、違う形で指示を受けていたことを示している。チーム代表のクリスチャン・ホーナーもある時点でベッテルに向けて「バカ者」と言う言葉を発していた。
「信じてもらえるかどうかは分からないけれど」、とベッテルは続けた。
「クリスチャンが無線で僕に話しかけてくることはあまりないんだ。そして今回は僕がストレートを最高速で走っているときに話しかけてきた。無線で何か言われたのは聞こえたけれど、内容は分からなかった」
その後、ベッテルの雰囲気はさらにけんか腰となり、もし時間を巻き戻してまたあのときに戻ることができたとしても、多分また指示を無視してウェバーを攻めるだろうとほのめかし、次のように続けた。
「結論を言えば、僕はレースをしていたし、僕のほうが速かった。だから彼(ウェバー)を追い抜いて僕が勝った、ということさ」
「自分のことを悪者だとは思っていないよ」
友人でもあるキミ・ライコネン(ロータス)が2014年シーズンのウェバーの後任候補だといううわさがある中、ベッテルは、ウェバーが自分にとってのライバルであるという結論に導いたようだ。
現在、ウェバーとの間に信頼関係はあるか、と問われたベッテルは、「正直に言って、信頼と呼べるものはないね」と答えている。
さらに、マレーシアでの一件は、以前ウェバーから受けた何らかの行為に対する「仕返し」だったのか、と問われたベッテルは、「間接的にはそう言えるだろうね」と語った。
ベッテルは、ホーナーから後ろに下がってウェバーをもう一度前に行かせろという別の指示を受けてはいなかったことも明らかにすると、次のように続けている。
「ウェバーにはそれ(優勝)には値しないよ」
「僕は彼のほうから支援を受けたことなど決してなかった」
「レーシングドライバーとしての彼に対してはすごく尊敬している。だけど、過去にも一度ならずチームを助けることができるチャンスがあったにもかかわらず、彼はそうしなかった」
ベッテルが突然態度を変えてこういうコメントを行ったと聞いたジェンソン・バトン(マクラーレン)は「驚いた」という。
対するウェバー本人は次のように答えている。
「もし彼(ベッテル)がそう考えているのなら、そういうことだろうね」
「それがマレーシアで起こったことに対する彼の見解なんだ」
髪をかなり短くしてきたウェバーだが、新しいことを始めるためにイメージを変えたわけではないとしている。ウェバーは、今はこのまま移籍やF1を去るつもりはないと主張しつつも、2014年には別のことをやるかもしれないということは否定せず、次のように語った。
「もちろん、今シーズンをやり遂げたいと思っている。多くのひとたちがそれに関する質問をしてきたけど、ほかのことは考えていないよ」
さらに、来年以降に関して、ウェバーは次のように付け加えた。
「これまで、シーズンのこの段階で自分のキャリアに関する決断を下したことは一度もないよ。そのことが現時点で話題になっているとしても、なぜ今自分の将来のことを決めなければいけないのか分からないね」