非常に苦戦が続いているHRTだが、チーム代表のルイス・ペレス・サラは、今シーズン中にKERS(運動エネルギー回生システム)を導入することは難しいだろうと認めている。
サラによれば、HRTの2012年型車F112はKERSシステムが搭載できるように設計されていたが、現時点では107%ルール以内で確実に予選を通過させることのほうが先決だと考えているようだ。107%ルールとは、予選Q1でトップのタイムから107%以内のタイムを記録しない限り、決勝への出場が認められないというもの。
実際にHRTは、F112の準備が間に合わず、F112でのテストを行わないまま開幕戦オーストラリアGPを迎え、予選落ちになっていた。サラは、『El Confidencial(エル・コンフィデンシアル)』へ次のように語っている。
「われわれはまだ自分たちのクルマのことを理解できていない。(クルマは)KERSを搭載するように設計されているが、短期的には導入を考えていない。今年はKERSを使ってレースをすることはないだろう」
「だから、この点においてはクルマは完ぺきではない。われわれはたった今急いでクルマを組み立てたばかりだ。だからバーレーンGP(22日決勝)のすぐ後にムジェロ・サーキット(イタリア)で行われるテスト(5月1~3日)がわれわれにとっては非常に重要なものになるだろう」
「バーレーンGPが終わったら、ここ(マドリードの新チーム本拠地)にクルマを持ってくる予定だ。スペインGP(5月13日決勝)からはもっと効果的に機能し始めるだろう。中国GP(15日決勝)とバーレーンGPでもクルマやチームについていろいろと改善を行うが、それは今年1年、時間をかけてゆっくりと手順を踏んでゆくことになる」
「私は今ここ(マドリード)にいるが、何人かはバルセロナにいるし、ドイツやイギリスにもメンバーがいる。クルマは中国に向かって輸送中だが、われわれはパフォーマンスだけでなく、信頼性の問題にも立ち向かう必要がある」
HRTにとってはつらい状況だが、サラは2010年にデビューして以来HRTが後退しているのではないかという「パドックの感覚」をその通りだと認め、次のように続けている。
「今年はわれわれにとって、まさに(F1で)最初の年なんだ」
またサラは、かつて下位に沈むチームに対して常に批判的な立場をとっていたF1最高権威者のバーニー・エクレストンが「もの静か」になったと次のように語っている。
「わたしたちの間には何の問題もなかったし、彼は落ち着いていると思うよ」
多くのライバルチームたちがあたふたと2013年に向け、F1の商業面などを規定する新コンコルド協定の調印を行っており、HRTにとってもサーキットの外でも忙しい時期を迎えることになるが、これについてサラは次のように語った。
「ほかのチームに比べてもっと先へ行っているチームがいくつかあるが、われわれにとって、交渉はまだ始まったばかりだ」
そしてサラは、現状におけるもっとも明確な目標は、「一致団結したチームにすること、小さなチームでも開発ができる信頼性のあるクルマを持つこと、そして、ポールポジションのタイムから105%あたりにいられるようにすることだ」と締めくくっている。