バルテリ・ボッタス(メルセデス)が、早ければ今季中にもジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)にシートを明け渡すことになるのではないかとのうわさがささやかれ始めている。
このところ不振に陥ってしまっているメルセデスだが、先週末にバクーで開催された今季のF1第6戦アゼルバイジャンGPではとりわけボッタスの不調が目についてしまった。
現チャンピオンであるルイス・ハミルトンも同様に苦しんでいたものの、予選では調子を上げて2番グリッドを確保。だが、ボッタスは10番グリッドに留まり、決勝でも順位を下げて12位フィニッシュで終わってしまった。
そうしたボッタスのパフォーマンスに加え、最近ではメルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフのボッタスに対するコメントも少しずつ変化を示している。
第5戦モナコGPではシャルル・ルクレール(フェラーリ)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)に次ぐ予選3番手となったボッタスは、ルクレールがマシントラブルで出走できなくなったこともあり決勝では2番手の位置をキープしながら走っていた。
ところが、タイヤ交換のためにピットインしたボッタスの右フロントタイヤがはずれないというトラブルが発生。ボッタスは無念の途中リタイアとなった。
しかし、その後ヴォルフはピットインした際にボッタスがクルマを正しい位置に停めなかったのがその原因のひとつだったという趣旨の発言を行ったのだ。ビデオ映像を見てもボッタスの停車位置がそれほどずれていたわけではなかったのは明らかであり、ボッタスもさすがにこのヴォルフのコメントには「驚いた」と語っていた。
そのヴォルフだが、アゼルバイジャンGP後には次のように語っている。
「バルテリは今年もまた信じられないほどの不運に見舞われている。モナコを見るがいい」
「来年のドライバーを決める際には、間違いなくその点を考慮に入れることになるよ」
そう語ったヴォルフだが、モナコでのピットストップ問題については自分が間違っていたと認めている。
「実際のところ、彼は非常に正確に停めていた。彼は全体を通じて一度もミスを犯していなかった。それは我々(チーム)の問題だったんだ」
「あそこでの私は間違っていた。私は彼が数センチメートルずれていたと言ったが、彼は正しくやっていたよ」
しかし、アゼルバイジャンGPではフェルスタッペンが不運なトラブルによりリタイアとなったものの、チームメートのセルジオ・ペレスがいい働きをして優勝を果たしたことでレッドブルがコンストラクターズ選手権においてメルセデスとのポイント差を広げることに成功している。
今季序盤こそ慣れないレッドブル・ホンダF1マシンにてこずっていたペレスだが、メディア関係者の中にももはやドライバーラインアップの面でもレッドブルがメルセデスに対して優位に立ったと考えている者もいる。
ドイツで長年にわたってF1解説者を務めてきたカイ・エベルはテレビ局『Sport1(シュポルト1)』に次のように語った。
「セカンドドライバーに関して言えば、ペレスは素晴らしいレーシング・インテリジェンスを持っていると思う」
「ボッタスはもう何年も最高のマシンに乗っているが、ペレスもあのマシンだったら少なくとも同じくらいの成果を上げていただろう」
一方、元F1ドライバーのラルフ・シューマッハはテレビ局『Sky Deutschland(スカイ・ドイチュランド)』に対し、ボッタスがルイス・ハミルトンと「非常に近い距離」にいない時は効果的なサポートを果たせていないと語り、次のように付け加えた。
「優秀なチームメートは、ほかのチームを自分が望む場所においやることができるものさ」
ラルフ・シューマッハはさらに、ボッタスは「モナコではよかったが、バクーでは再び悪かった」と語り、それは「F1タイトル争いをするメルセデスにとっては大きな問題だ」と次のように続けた。
「一方では、それではチームの順位に貢献できないし、もう一方ではハミルトンのサポート役としても完全に不足しているよ」
ドイツのテレビ局『RTL』も、ボッタスはもはやハミルトンのサポート役としては不十分だとし、次のように主張している。
「若手にもっとうまくやるチャンスを与えるべき時だ」
「ジョージ・ラッセルをあのコックピットに座らせる時だ」
オランダの『De Limburger(リムブルガー)』も次のように報じている。
「ボッタスには気をつける必要がある。さもないと、ラッセルがすぐにあのメルセデスに乗ることになるだろう」
最近のヴォルフとボッタスのやりとりなどを見る限り、ボッタスが来季、あるいは今シーズン最後まで、メルセデスに残るには今後のレースでかなりのパフォーマンスを示し続ける必要があるのは間違いないだろう。
今後の展開次第では、メディアが言うように、今季中にもメルセデスとの契約下にあるラッセルがボッタスと入れ替わる可能性もありそうだ。