今年からF1マシンに装着が義務付けられたコックピット保護装置「ヘイロー」に関し、数名のドライバーが課題を指摘している。
F1ドライバーの中にもヘイローによって安全性が向上することを歓迎している者もいる。だが、中にはヘイロー導入は間違いだと考えている者も少なくない。
その1人はハースのケビン・マグヌッセンだ。
■ヘイローは不格好でうっとうしい
「あれはすごくうっとうしいし、醜いよ」
母国デンマークの『Ekstra Bladet(エクストラ・ブラデ)』にそう語ったマグヌッセンは次のように付け加えている。
「それに、クルマに乗りこんだり降りたりするのが大変なんだ。ステアリングホイールの着脱も面倒だしね。本当に不格好でうっとうしいんだ」
バルセロナで今季のF1シーズン前テストが行われた際に、ヘイローにドライビングスーツをひっかけて破いてしまうというハプニングを経験したトロロッソのピエール・ガスリーもヘイローは「面倒だ」と否定的な見方をしている。
マグヌッセンは一方で、ヘイローは嫌いではあるものの、F1カーを運転するのにそれほど邪魔になるわけではないとも語っている。
「問題はないよ。いずれにせよ、コーナーでは左や右を見るわけだしね。気にはなるけれど、大きな問題じゃないんだ」
■ヘイローの存在が事故につながる可能性も
しかし、マグヌッセンは安全装置のヘイローを装着することによって逆に事故が起きるリスクが増す場面もあるだろうとF1ベルギーGPが開催されるスパ・フランコルシャン・サーキットやアメリカGPの舞台となるオースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズを例にあげながら次のように続けた。
「もし誰かをオールージュで追いかけていたとするよ。そしてそいつが一番上でミスをしてスピンしても、それを見ることはできないよ。それは多分オースティンのターン1でも同じだろうね」
F1カーが上り坂を走行しているときにはヘイローによって視界が遮られる可能性があると指摘したマグヌッセンは次のように付け加えている。
「だけど、僕にとってはF1はオープン(コックピット)であることが重要なんだ。だからこれはF1にとっては間違いだよ」
■降雨に気付くのが遅れる可能性も
今季ルノーのフルタイムドライバーを務めるカルロス・サインツは別の問題を指摘している。
「雨が降り始めたとき、ヘイローによって(ヘルメットの)バイザーに雨粒がつかなくなるんだ。だから本当に雨が降っているのかそうではないのかが分からないんだ」
また、今季はウィリアムズのリザーブ兼開発担当ドライバーとして8年ぶりにF1の世界に戻ってきたロバート・クビサもヘイローをあまり歓迎していないようだ。
「クルマから降りるのが難しいんだ」
今でも右腕に2011年に起きた事故による後遺症を抱えるクビサはそう語ると、ほほ笑みを浮かべながら次のように付け加えた。
「オーストリアでの開幕戦が終わったら、みんながクルマから降りようとしているときに僕は笑いながらピットロードを歩いていくことになると思うよ」