ザウバーのチーム設立者であるペーター・ザウバーが、共同オーナーであり、唯一の女性F1チーム代表であるモニシャ・カルテンボーンを擁護する発言を行った。
インド生まれで、現在はオーストリアの国籍を持つカルテンボーンは、2015年F1開幕戦オーストラリアGPの決勝後にはほほ笑みを浮かべていた。2014年には1ポイントも獲得できなかったチームが、今年は初戦でフェリペ・ナッセが5位、マーカス・エリクソンが8位に入賞し、合計14ポイントも獲得できたのだから当然のことだろう。
■躍進著しい2015年のザウバー
財政難に見舞われ、チーム消滅の危機を迎えていると報じられているチームが、まだ1レースを終えただけとはいえ、チームランキングはウィリアムズやレッドブルよりも上の3番手につけている。
今季のザウバーF1カーC34が昨年よりも大幅に競争力が改善されたことは確かだが、この最大の要因はフェラーリから供給されるエンジンが大幅に改善されたことによるものだと考えられている。
しかし、カルテンボーンは次のように主張した。
「フェラーリのエンジンが大きく改善されてこともありますが、パッケージ全体がよくなっているんです。私たちもシャシーを大きく進化させています」
■今後の展開に予断を許さないヴァン・デル・ガルデ問題
だが、ザウバーは、このオーストラリアGP開幕前に、昨年控えドライバーとして所属していたオランダ人ドライバーのギド・ヴァン・デル・ガルデから訴えを起こされていた。その裁判に敗訴したザウバーは、チーム資産の差し押さえ、あるいはカルテンボーンの逮捕という状況を迎えるかもしれないという危機的状況を迎えていた。
そうした状況を受け、チームオーナーであるザウバーも急きょ母国スイスを発ち、オーストラリアGPが開催されるメルボルンに向かっていた。
ペーター・ザウバーがメルボルンに到着したのとほぼ同じタイミングで、カルテンボーンは何とかヴァン・デル・ガルデ側との交渉をまとめ、メルボルンでの出走を可能とするところまで持ち込んでいる。
だが、現在ザウバーでは正式な契約を有するドライバーが3名いるということが司法によって認定されたことになっており、この問題が次戦マレーシアGP(29日決勝)以降にも持ち越されることは必至だ。
カルテンボーンは、15日(日)の夜に「それについては何もお話しできません」と語るのみだった。
■カルテンボーンの資質を問う声も
こうした局面を打開するために必要なのは、やはり「資金」だ。今後どういう方向にヴァン・デル・ガルデの問題が進展するにせよ、ザウバーでは今後誰かに対して何らかの賠償責任を負うことはまぬがれないとみられている。問題はその資金をどうやってねん出するかだ。
「新しいスポンサーが突然現れるなどということは考えられません。そういう驚きがあればうれしいんですけどね」
そう語ったカルテンボーンだが、出資者たちは、ザウバーがオーストラリアでよい成績を上げたことだけに注目してくれるわけではない。ヴァン・デル・ガルデの一件ではカルテンボーンに対する批判の声が大きく渦巻いている状況だ。
ヴァン・デル・ガルデやエイドリアン・スーティルと契約を一方的に解除し、何の対策も採らなかったことがこうした状況を招いたものであり、カルテンボーンの自業自得だという見方も強い。
13日(金)には、カルテンボーンに対してメディアから、チーム代表の座を辞するつもりはないのかという質問が浴びせられるほどだった。
■カルテンボーンなくしてザウバーなしとチーム創設者
しかし、ペーター・ザウバーは、カルテンボーンをチーム代表の座から追うつもりはないとスイスの『Blick(ブリック)』紙に次のように語った。
「モニシャ・カルテンボーンがいなくなれば、ザウバーも消えてしまうだろう」
71歳のザウバーは、『Neue Zurcher Zeitung(ノイエ・チュルヒャー・ツァイトゥング)』にも次のように語った。
「もし彼女が一緒にやりたいと言ってくれなければ、6年前に(BMWから)チームを買い戻したりはしなかっただろう」
「それは一緒に決断したことだった。私にとっては、彼女が今のポジションにいてくれたことが本当に幸運だったんだ」
そう語ったペーター・ザウバーは、次のように付け加えた。
「ほかのたくさんのチームにとっても、この女性がF1にいることは非常に幸運なことだと思うよ」