以前まではチャンピオン候補のひとりに挙げられていたジェンソン・バトン(マクラーレン)だが、大混戦模様で大きな注目を集めている2012年シーズンの中で行き場を見失っている。
今シーズンの開幕戦オーストラリアGPを制したバトンだが、この数戦はパッとした成績を残すことができていない。カナダGPでは、チームメートのルイス・ハミルトンが優勝を飾る一方で、バトンは16位という低迷ぶりをさらし、これまでの悪い流れもいよいよどん底にまで来てしまったようだ。
レース終了後、モントリオール(カナダGP開催地)から引き上げる際、バトンは「混乱しているし、本当に途方に暮れている」と認めた。
バトンは5月と6月に開催された全てのレースの予選結果が10位かそれ以下の成績と、惨たんたる内容だ。そして、今シーズンのバトンがこれまでに獲得したポイント数は、現在選手権をリードしているハミルトンの半分でしかない。
「なにもできることがなかった」と日曜のレース後にバトンは報道陣にため息交じりにもらした。
「ここに来る以前の数レースと似たような内容だった。なんでそうなったのかが分からないんだ」
2011年シーズンでタイトル争いを演じたバトンは、自身の運転技術でこれまで特に高く評価されていたタイヤを労わる走り方が、今シーズンはまるで役に立っていないことに対して戸惑いを隠せずにいる。
その謎を一層ややこしくしているのがハミルトンだ。ハミルトンはバトンよりも攻撃的な運転スタイルのため、タイヤの消耗が早いはずなのだが、どういう訳かただでさえ消耗が早いと指摘されているピレリのタイヤが、ハミルトンに有利に働いている。
エンジニアが次のバレンシア(ヨーロッパGP/6月24日決勝)までの2週間の間で、この現状を打破するために何をするつもりかとバトンに尋ねたところ「今はまったく見当も付かないよ」と述べていた。
「先頭集団よりも1.5秒も遅く走っていたんだ。その中のひとりは僕のチームメートだよ。何でクルマをもっと速く走らせられないのか分からない」
「きっとタイヤが原因ではないと思う。僕ひとりが(今年の)タイヤを扱えないドライバーって訳じゃない。それはあり得ない」
「クルマの限界点のような気がするんだ。困惑して、途方に暮れた状態でカナダから発つことになるね」と苦しい胸の内をバトンは明かした。