政治的な問題が注目されたバーレーンGPだったが、レースの結果を支配したのは「タイヤ」だった。
バーレーンGPで2位になったロータスのキミ・ライコネンは、ポールポジションから10番グリッドを決める予選のQ3セッションにあえて進出せず、新品タイヤを使わずに温存。決勝では、そのタイヤをうまく使って速いペースで追い上げ、11番グリッドからスタートして表彰台に上がった。その一方で、それまで好調だったマクラーレンやメルセデスAMGは速さを見せられず、ドライバーズ・ランキングでトップだったマクラーレンのルイス・ハミルトンも8位止まりだった。
この結果に対して、マシンの性能やドライバーの力量ではなく、タイヤがレースの結果に影響を与えすぎているのではないかという批判も上がっている。
レース後、メルセデスAMGのミハエル・シューマッハは、この状況に対して「不満」だと認めた。
「コーナーで60%か70%で走っていることもある」というシューマッハの言葉をドイツの『Bild(ビルト)』紙が伝えている。
イタリアのタイヤメーカーであるピレリは、こうした批判を軽視せず、性能低下の大きいタイヤを作ったのは、F1を「面白く」してほしいという注文に応えただけだと反論している。
ピレリのモータースポーツ責任者ポール・ヘンベリーはバーレーンGPの翌日、ツイッターであるファンのつぶやきをリツイートした。そのツイートは、F1で7回王者になったシューマッハに対して、「乳母車からおもちゃを」投げている赤ん坊みたいだと非難する内容だった。
さらにピレリは、バーレーンGPはF1カレンダーの中でもおそらくタイヤの性能低下が「最も厳しい」レースだとして、その特異性を訴えている。
ピレリは決勝後のプレスリリースで、決勝では「いかにタイヤをうまく使い、温度による性能低下を抑えることができるかが、結果的に極めて重要な要素だった」と述べている。
『Times(タイムズ)』紙の記者ケビン・イーソンはバーレーンGPについて、「素晴らしいレースだったが、タイヤマネジメントというより、運試しになっていなかったか、確信がもてない」とツイッターでつぶやいている。
マクラーレンにとっては、バーレーンGPで運はめぐってこなかった。マクラーレンは今年一番のマシンと言われているにもかかわらず、速さを見せられなかった。
「中国GPからたった1週間でマシンを1秒も速くしたチームがいたわけではない」とマクラーレンのジェンソン・バトンも失望を隠していない。「でも、ここでは僕たちのペースは1秒遅かったんだ」と付け加えている。
マクラーレンのチーム代表マーティン・ウィットマーシュは、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌に対し「原因はタイヤの内圧だったのかもしれないし、タイヤの温度だったのかもしれない。確かなことは分からない」と話した。
同誌はウィットマーシュのコメントについて、徹底して科学的な分析をすることで知られるマクラーレンにとって「心配な出来事」だと伝えている。
ウィットマーシュもそれを認めている。「もう少しダウンフォースを見つけるといったことより、タイヤを理解することのほうが重要になった」
しかし、ピレリのテストドライバーであるハイメ・アルグエルスアリは『Mundo Deportivo(ムンド・デポルティーボ)』紙に対して、ピレリは批判ではなく、称賛に値すると述べた。
「この10年で一番見応えのあるF1になったのは、ピレリによるところが大きい」とアルグエルスアリは話している。