伝えられるところによれば、全22戦で行われた2023年のF1はスケジュールがあまりに過酷だったためにシーズン終盤に体調不良を訴えるドライバーやチームスタッフが多かったようだ。
■風邪薬を大量に購入していたとレッドブルのボス
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、今季のF1最終戦が開催されたアブダビで次のようなジョークを語っていた。
「風邪薬の購入費用がバジェットキャップ(チーム予算上限)以内であることを心から願っているよ」
「かなり残酷な体制だったからね」
■最終戦では多くのドライバーが体調不良に
実際のところ、F1チームたちは今季終盤には3週連続でアメリカ、メキシコ、ブラジルでレースを行い、1週の間隔を開けて今度はラスベガスから12時間の時差があるアブダビに飛んで2週連続でレースを行っていた。つまり、この6週間の間に5レースが行われるという超過密スケジュールで戦っていたのだ。
そのため、ドライバーの中にもウイルスなどへの抵抗力が下がり、体調を崩していたものが少なくなかったようだ。
例えば、フィンランド出身ドライバーであるバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、スウェーデンのストリーミングサービス会社『Viaplay(ヴィアプレイ)』の記者から「喉にカエルがいるのでは?」と尋ねられると、「ちょっとインフルエンザにかかっているんだ」と認めていた。
また、エステバン・オコン(アルピーヌ)は、コックピットの中ではなんとか耐えていたものの、アブダビでの週末は大半をベッドで過ごしていたことを認めている。
「普通は、ここから戻ったときに体調を崩すものなんだ」
そう語った27歳のフランス人ドライバーは次のように付け加えた。
「でも、僕たちは昨年より1レースか2レース多くやったけれど、身体は物理的にそれに対応できるようにはできていないんだ」
メルセデスのジョージ・ラッセルも、アブダビGP決勝では3位表彰台に上ったものの、そのレースが特に辛かったと認めている。
「僕は全ての周回で咳き込んでいたよ。だけど、マシンに縛り付けられているときは息ができないし、大きく咳をするために深く息を吸うこともできないんだ」
「かなり悲惨だったよ」
■身体が混乱してしまうとラッセル
F1ドライバーたちによる任意団体であるGPDA(グランプリ・ドライバーズ・アソシエーション)の理事でもある25歳のラッセルはそう語ると、次のように続けた。
「だけど、パドックにいる全員がそうなんだ。多くのメカニックが体調を崩しているし、エンジニアのオフィスでもそうだ。タイムゾーンが常にずれることに本当に苦しめられているよ」
「身体は自分がどこにいるのかわからないんだ。異なる時間に食事をし、異なるホテルに泊まり、異なる環境、異なる気候に身を置くわけだからね。身体が混乱してしまうんだ」
「来年に向けては、人員を全てのレースで働かせることができないように規制するための話し合いも行われていると思うよ」
■2024年F1カレンダーの見直しもありえる?
チームスタッフたちに関して言えば、交代制を組んでレースに臨むことも不可能ではないかもしれない。だが、ドライバーの場合はそういう手段を講ずるのは現実的に不可能であり、レース数や、開催間隔などの調整で対応するしかなさそうだ。
しかし、来年のF1カレンダーには前代未聞の年間24戦が組まれており、その中には今年と同じように時差が大きい場所へ移動することになるレースも多く含まれている。そして、すでに各グランプリ開催地ではそれに向けた準備も始められており、これからスケジュールを見直すのは簡単なことではないだろう。
だが、チームとドライバーの多くは、このスポーツのために旅をする4000人のF1関係者の福利ためには変更を求めてロビー活動を行っていく必要性があると考えているようだ。
アストンマーティンのチーム代表であるマイク・クラックは次のように語り、何らかの変更が行われる可能性もあると示唆している。
「すでにピットレーンのいたる所で議論されているように、今後に向けて何らかの調整が行われることになると思うよ」