F1最高責任者(CEO)のステファノ・ドメニカリが、2026年に導入される新F1エンジンレギュレーションにおいては、エンジンが発生する音をもっと大きくするつもりだと語った。
■ハイブリッド化とともに失われた魅力的なF1エンジン音
かつて、F1の数ある魅力のひとつが、エンジンが発生する大きな音だったのは事実だ。だが、2014年に現在のハイブリッド方式エンジンが導入されて以降、F1マシンのエンジン音はかなり小さく、その音色もかつてのような魅力的なものではなくなったと考えている者が多い。
最近、7度F1王座に就いた実績を持つルイス・ハミルトン(メルセデス)も、かつて大音量だったF1エンジン音を懐かしく思うと認め、次のように語っている。
「もし、昔のように大きな音が発生する環境に優しいマシンを手にすることができれば、すごくいいだろうね」
2026年には新たなF1エンジンレギュレーションが導入されることになっているが、その仕様では、現在のエンジンよりもさらに電力によって発生するパワーが増えることになっている。
■エンジン音増大に取り組むのがF1の義務
しかし、かつてフェラーリのチーム代表を務めていたことでも知られるドメニカリは、オーストラリアのラジオ局『3AW』に対し、2026年からはF1エンジン音をさらに大きくする方向で考えていると次のように語った。
「新たなレギュレーションにおいてはエンジン音そのものをもっと大きくすることを目指している。なぜなら、それが我々を興奮させるものだからだ。私の耳には、それは音楽だよ」
「我々のファンもそれを聞きたいと望んでいるし、それに取り組むのが我々の義務だよ」
「我々には12気筒の時代があったのも事実だ。それは異なる周波数で、非常に音が大きかった」
「それから、10気筒になり、8気筒になり、6気筒になった。もうまた減ることはないよ」
■F1エンジン音の改善は本当に可能?
実際のところ、2026年のF1エンジンレギュレーションに関しては、現在のコンポーネントのうちMGU-H(熱エネルギー回生システム)は撤廃されることが決まっているが、内燃機関部分に関しては現在と同じ1.6リッターV型6気筒エンジンが継承されることになっている。しかも、使用される燃料は、環境負荷が小さい合成燃料となる予定だ。
エンジンが大きな音を発生する部分はこの内燃機関部分であり、その構造が基本的に変わらない中で音を大きくするというのはかなりハードルが高いことのようにも思える。
実際、これまでに検討された案の中には、エンジンの回転数に合わせてコンピューターで作った合成音をスピーカーから流すというものもあったが、ファンがそうした“フェイク音”で本当に満足できるとは考えづらい。
果たして、2026年から本当にF1エンジンがかつてのような魅力的な音を奏でるものになるのか、非常に興味のもたれるところであり、ドメニカリCEOの手腕に期待したいところだ。