かつてフェラーリで戦ったこともある元F1ドライバーのジャン・アレジが、2022年からF1レースディレクターを務めているニールス・ヴィティッヒを擁護した。
■レースディレクターに批判が集まったオーストラリアGP
先週末にメルボルンで開催された2023年F1第3戦オーストラリアGP決勝は、度重なる赤旗中断の上、最後は2周のスプリントレースとなったことからマルチクラッシュが発生する荒れた展開となってしまった。
複数のドライバーやメディアはこぞってそのレース運営を非難し、レースディレクターのヴィティッヒがレースを赤旗で中断し、改めてスタンディングスタートでラスト2周を戦わせたのは、スポーツよりも“ショー”を優先させるためだと主張している。
■アメリカのレースを思い出したとマルク・スレール
例えば、スイス出身の元F1ドライバーであるマルク・スレールは、アメリカのレースシリーズを引き合いに出しながら、『f1-insider.com』に次のように語っている。
「NASCARやインディカーを思い出したよ」
「あそこでは、レースが再開されるのはショーのためだけだ。何が何でも見せ場をつくるためにね」
■ああなるのは予測できたはずだとラルフ・シューマッハ
また、ドイツ出身元F1ドライバーのラルフ・シューマッハも、残り2周でスタンディングスタートさせれば、大惨事が発生するのは「論理的」に予測できることだったと主張し、次のように付け加えている。
「ドライバーが誰も怪我をせずに済んだのは、本当に幸運だったよ」
■もっとふさわしいレースディレクターが必要だとゲルハルト・ベルガー
さらに、オーストリア出身の元F1ドライバーであるゲルハルト・ベルガーも、もっとふさわしいレースディレクターがF1には必要だと主張している。
「世界最高のドライバーたちとFIA関係者の間のギャップはどんどん大きくなっているよ」
1993年から1995年までフェラーリでアレジと共に戦った経験を持つベルガーはそう語ると、次のように付け加えた。
「オーストラリアでは、かつてドライバーだった者、あるいは、ほかの立場でこのスポーツに携わっていた本物のプロフェッショナルがF1のオフィシャルとして必要であることが非常にはっきりしたよ」
■アレジが反論「レースディレクターはルール通りにやっただけ」
しかし、現在58歳のアレジは、ヴィティッヒはルールブックに書かれていることをそのまま実践しただけだと擁護している。
「大混乱のレースになったということは同感だよ」
フランス出身のアレジは、イタリアの『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』紙にそう語ると次のように続けた。
「しかし、私が理解できないのは、すべて泣き言ばかりだということだよ」
「レースディレクターは、単にルールブックに書かれているルールをそのまま適用しただけだ」
■サインツのペナルティーも問題ないとアレジ
アレジはさらに、ラスト2周の戦いのさなかにフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)にマシンをぶつけたことで5秒ペナルティーを科されたカルロス・サインツ(フェラーリ)が、それは「これまで経験した中で最も不当な罰」だと語ったことに対しても苦言を呈している。
サインツは波乱のオーストラリアGP決勝を4番手でフィニッシュしたものの、レースタイムに5秒が加算されたことで正式結果は12位となり、ポイント獲得を逃している。
そのサインツのペナルティーに関しては、フェラーリのチーム代表を務めるフレデリック・バスールも、第2戦サウジアラビアGPでは「フェルナンド・アロンソがスタートボックスにいるかどうかを決めるのにスチュワードが30周もかかった」のに対し、「ここオーストラリアでは、カルロスがペナルティーを受けるのに5秒しかかからなかった」と批判している。
しかし、アレジの意見は違っている。
「サインツに対する罰は、私から見れば理解できるものだ」
「サッカーでは、終了間際にペナルティーが出されるという状況はしばしばあることだよ。ファウルはファウルなんだ」
通算202戦のF1出走実績を持つアレジはそう語ると、次のように付け加えた。
「そして、正直なところ、サインツはリプレイをよく見なくてはならないよ」