F1は“フル電動化”を目指すべきだという圧力に抵抗しながら、正しい道を歩んでいる。
そう考えているのはF1最高責任者(CEO)のステファノ・ドメニカリだ。
かつてフェラーリのチーム代表を務めていたことでも知られる57歳のドメニカリは、F1が単純にフル電動化を目指すのではなく、ハイブリッドエンジンやその他の持続可能な方策にこだわっているのは、賢明な選択なのだと主張している。
■電気自動車だけをベースとするのは無理
「技術やエネルギーの転換には、精神的な柔軟性が必要なんだ」
イタリアのテレビ局『RAI 2(ライ・ドゥーエ)』にそう語ったドメニカリは、次のように付け加えた。
「電気自動車だけをベースとしたモビリティは絶対に実現しないよ」
■経済的インパクトを考慮した政策が必要
だが、EU(欧州連合)は、2035年までにガソリン車とディーゼル車の販売を全面的に禁止するという公式方針を打ち出している。ドメニカリが掲げるF1の方針はこれとは矛盾しないのだろうか?
ドメニカリはこれに関して次のように主張している。
「持続可能性には別の形があるという考え方が増え始めてきている。なぜなら、経済的インパクトは持続可能ではないからだ」
「政治が挑戦的な目標を設定するのは正しいことだ。だが、その手順に関しては、システムを知り尽くしている企業世界全体の手に委ねられることになる」
「適切な方法で考慮されなくてはならないサプライチェーンがあるため、良識的に選択する必要があり、欧州はこれに関しても重要な役割を果たす必要がある」
「ヨーロッパの政策は、この状況を考慮しなければならないよ」
■F1はカーボンニュートラル化の促進役
そうした状況の中で、F1の立ち位置は具体的にどういうものになるのかと尋ねられたドメニカリは、改めて現在F1が掲げている基本方針に言及しながら「2030年までに持続可能でカーボンニュートラルなものにすることだ」と答え、次のように付け加えた。
「F1は今後数年間にわたって、こうしたプロセスの促進役としての機能を担うことになるだろう」