マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が、2020年に自身初のF1ドライバーズタイトルを獲得するのは難しいだろうと認めた。
フェルスタッペンはシルバーストン・サーキットで行われた2020年F1第4戦イギリスGP決勝では優勝したルイス・ハミルトン(メルセデス)にあと一歩及ばなかったものの第3戦ハンガリーGPから2戦連続で2位表彰台に立った。
しかし、実際のところレースはメルセデスが完全に支配しており、終盤にハミルトンとバルテリ・ボッタスがタイヤトラブルに見舞われなければフェルスタッペンは3位でレースを終えるのがやっとだったはずだ。
シルバーストンでのレース後に、ハミルトン以外のドライバーに2020年のF1ドライバーズタイトルを獲得するチャンスがあると思うかと尋ねられたフェルスタッペンは「ノー」と簡潔に答えている。
しかし、メルセデスが2台ともレース終盤にタイヤトラブルを抱えたということは、メルセデスの2020年型F1マシンがタイヤに厳しい特性を持っているのではないかと考えている者もいるようだ。もしそうであれば、今後のレースに向けてそこがメルセデスにとってのアキレス腱となる可能性もありそうだ。
F1公式タイヤサプライヤーであるピレリのF1責任者を務めるマリオ・イゾラは、今回のメルセデスのタイヤトラブルに関して次のように語った。
「摩耗していたのかもしれないし、あるいはデブリ(コース上の異物)によるものだったのかもしれない」
「必要であれば、タイヤをミラノ(ピレリ本部)に送るし、そこには現場以上に詳しく分析できるツールもある」
今週末は同じシルバーストンで第5戦70周年記念GPが開催されるが、そこでは先週末のイギリスGPで使用されたものよりそれぞれ1段階ずつ軟らかいタイヤが使用されることになっている。
イギリスGPではほとんどのドライバーがレース中に1回のタイヤ交換を行う戦略で臨んだが、フェルスタッペンは今週末のレースでは2回ストップが主流になるだろうと考えている。
「それによって大きく変わるとは思わないけれどね」
そう語ったフェルスタッペンは、いずれにしてもメルセデスとの差は大きすぎると次のように続けた。
「(差は)すごく大きいよ。あきれるほどさ。コンマ1秒、もしくはコンマ1.5秒は縮められるかもしれないけれど、それでは十分じゃない」
「僕も差を縮めようと頑張っているけれど、現時点では不可能だ。またこういうチャンスがあることを願ったとしても、そんなことは起きないよ。僕たちには頑張り続けるしかない」
「だから、僕はサーキットの横で羊を数えることになるんじゃないかな」
イギリスGP決勝ではメルセデス勢の後ろ3番グリッドからスタートしたフェルスタッペンだが、スタートでその位置をキープして後続とのギャップを大きく広げることに成功していた。
だが、フェルスタッペンもメルセデス勢からは大きく離されてしまい、3番手の位置でずっと“ひとり旅”を続ける状態となっていた。
そして、その間、フェルスタッペンは無線を通じて自分の担当エンジニアに「水分を摂るように」と冗談っぽく伝えていた。
「僕のエンジニアに水を飲むように言ったんだ。ここでは脱水症状にならないことがすごく大事だからね」
微笑みを浮かべながらそう語った22歳のフェルスタッペンは「かなり孤独だったよ」とレースを振り返った。
ともあれ、フェルスタッペンを始め、多くのF1関係者が今季ハミルトンがミハエル・シューマッハが持つF1史上最多記録に並ぶ7度目のF1ドライバーズタイトルを手中に収めるのはほぼ間違いないと考えているのは事実だろう。
イギリスGP決勝ではファイナルラップでタイヤがパンクするというトラブルに見舞われたものの、なんとかフェルスタッペンの前でチェッカーフラッグを受けたハミルトンだが、レース後には次のような余裕とも言えるコメントを残している。
「正直な話、いいかい、僕は心の底から生粋のレーサーなんだ。これは僕が望んでいたような選手権ではないよ」
「超接近戦をもっとやりたいと思っている。それが僕のやる気の源だからね」
そう語ったハミルトンは、メルセデスが強すぎるためにF1が面白くないという声があることに対し、次のように付け加えた。
「突き詰めれば、すべてのチームにはルールが与えられている。そして結局のところ僕たちが非常に優れた仕事を成し遂げたということであり、そのことで僕のチームを責めることはできないよ。それは僕たちに落ち度があったということではないからね」