レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)が、レッドブル・レーシングが2020年シーズン限りでF1を撤退し、WEC(世界耐久選手権)に転向する可能性を示唆した。
ジャガー・レーシングを買収して2005年に誕生したレッドブル・レーシングだが、世界的エナジー飲料メーカーであるレッドブルの豊富な資金力を武器に有能な人材やドライバーを獲得。2010年から2013年までセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)を擁して4年連続でドライバーズタイトルとコンストラクターズタイトルを独占する活躍を見せた。
だが、2014年にPU(パワーユニット)と呼ばれる現行F1エンジンルールが導入されるとメルセデスが一躍最強チームの地位を確保。レッドブルのエンジンパートナーであったルノーはPU開発に出遅れてしまい、レッドブルは以降タイトル争いにからむことすらできなくなっている。
2018年シーズン限りでルノーと決別し、2019年からホンダにスイッチすることを決めたレッドブルだが、その契約期間は現在のコンコルド協定が満期を迎える2020年までの2年契約となっている。
■F1をやめることも選択肢にある
マルコは、2021年から導入される新たなF1エンジンやチーム予算に関するルール次第では、レッドブルがF1から撤退する可能性もあると示唆している。
「我々には2020年まで契約がある」
『Autosport(オートスポーツ)』にそう語ったマルコは次のように続けた。
「エンジンレギュレーションやコンコルド協定がどうなるか分からないうちは、レッドブルもホンダも決断を下すことはないよ」
「しかしながら、我々はもう二度と以前のようにほかに依存するつもりはまったくない。当時我々はほかのメーカーに供給を願ったが、発言や約束が守られることはなかった」
「やめることも選択肢にある。あるいは、何かほかのことをするかもしれないし、ほかのレーシングシリーズに向かうかもしれない」
マルコが言わんとしたことは、もしも2020年までにホンダエンジンでタイトルを獲得することが難しいと判断せざるを得ない結果となった場合、それ以降ほかのメーカーからエンジン供給を受けてまでF1で戦うつもりはないということだろう。
■WEC転向もしくは並行参戦の可能性
もし、レッドブルがF1から手を引く場合、新たな戦いの場となるのは有名なル・マン24時間レースを擁するWECの可能性が高そうだ。というのも、WECでは2020年には現在のLMP1カテゴリーに替えて、ハイパーカーと呼ばれる高性能市販車をベースとする新たなレギュレーションを導入する方向性を示しているからだ。
レッドブルでは現在タイトルスポンサーを務めているアストンマーティンとの共同プロジェクトによりヴァルキリーと呼ばれるハイパーカーを世に送り出したことで知られている。
マルコは次のように続けた。
「ヴァルキリーがあることで、ハイパーカールールが導入されるル・マン(WEC)が選択肢になるかもしれない。我々はヴァルキリーをやり遂げたし、センセーショナルな成功を収めた」
「あの車は即座に完売したよ。それはレッドブル・テクノロジーにとってもうひとつの重要な柱だ」
マルコは、2021年以降のF1ルールがどうなるかによっては、F1とWECの両方にエントリーする可能性も示唆するように次のように続けた。
「もしF1に予算上限値が定められれば、我々は人員削減に動くしかないだろう。我々としては必ずしもそうしたいとは思っていない。その場合、我々は削減されるはずの人員をそういうプロジェクト(WECなど)で使うこともできるだろうからね」
「我々のヴァルキリーをベースにすれば、妥当なコストでWECに参戦することもできそうだ」
「レッドブルはこれまで一度も24時間レースに出たことはないが、ずっと検討はしてきていたんだ」
そう語ったマルコは次のように付け加えている。
「財政面は主にアストンマーティンが負担することになるのも明らかだ。なぜなら、ル・マンで勝利の栄冠を手にするのはメーカーだからね。しかし、それは我々のコンセプトにも合致するだろう」