F1の安全性向上のため、FIA(国際自動車連盟)はドライバーの生体データの活用を目指している。
今季から、コックピット前方にはドライバーの頭部を撮影するハイスピードカメラが取り付けられている。開幕戦オーストラリアGPでのフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)の大クラッシュでも、このカメラの映像がアクシデントの分析に生かされた。
■ハイスピードカメラでクラッシュ時の頭部の動きを分析
FIAが発行する『Auto』誌の最新号に、その分析結果が掲載されている。カメラの映像から、アクシデントの際にアロンソのヘルメットがコックピット側面のヘッドレストに2回ぶつかったことが分かり、これは耳に装着していた小型の加速度計の記録とも合致した。
FIAのリサーチ責任者ローラン・メキーズは、このカメラの役割を次のように説明している。
「われわれが理解したいのは、Gフォースの大きなクラッシュで、頭部と首と肩が正確にどういった動きをしているかだ。そして、それがパッドやHANS、シートベルトなど、コックピットのほかの環境とどう影響し合っているかを理解したい」
「このカメラによって、頭の位置の変化や首の伸び具合など、頭部にかかる力をより正確に理解できる」
「ヘッドレストとどのように接触しているか、ヘッドレストがどういった働きをしているか、そして、次世代のコックピット環境を生み出す上で何をする必要があるかなどの理解につながる」
■生体データ収集を今シーズン中にテストしたいFIA
FIAが目指す次のステップは、ドライバーから心拍数や体温、汗のレベルなどの生体データを収集することだという。メキーズは次のように説明する。
「今シーズン末までにドライバーに何か付けられればと考えている。少なくともテストの際に」
「生体データは、少なくとも救急活動において、クラッシュの前とその最中、クラッシュ後のドライバーの状態をつかむのに役立つ」
2017年には「ハロー」と呼ばれる頭部保護装置が導入される見通しだ。ドライバーを撮影するカメラの台数もさらに増やす計画だという。
「将来の可能性は無数に考えられる。例えば、シートベルトによってドライバーの上半身に実際にかかる荷重を推定することなども考えられるだろう」
「決して終わりはない。安全性に関するリサーチに終わりがないのと同様だ。さらに理解を深めるため、今後も限界を押し広げていくつもりだ」とメキーズは語っている。