F1には危険が付きもの。もっと、そうであるべき。そんな意見にセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)が同調した。
危険性が増せば、それがF1にとってプラスになると今週、言い出したのはメルセデスAMG会長で3度のF1世界王者ニキ・ラウダ、そしてベッテルのチームメート、キミ・ライコネンだ。
危ない要素を取り除くために、F1はこの十年、何をしてきたのか。ひとつには、マシンを遅くした。さらに、サーキットも安全にした。だがベッテルによれば、彼が子どもの頃、彼をF1に引きつけたものは大きな音と危うさだった。
「今でも覚えている。父とともにホッケンハイムの森にある長い直線で、立ったまま遠くからエンジンの雄叫びを聴いたときのことをね」とドイツ『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』誌に話すベッテル。
ところがF1で一二を争う人気者になった今、フェンスの向こうでF1に目を輝かす父子の姿は減ったと彼は実感している。
彼は現在、GPDA(F1ドライバーズ協会)の理事。同協会がF1ファンを対象にアンケートを行なったのは、そんな理由からだ。結果はFIA(国際自動車連盟)ならびにバーニー・エクレストンに報告するという。
F1ドライバーではなく一ファンとして、何がベッテルの心を呼び覚すのか。
「正直言って、初めてF1マシンに乗ったときは怖かった」とベッテル。
「誤解しないでくれ。今もF1マシンの運転は大変だ。でもかつては、もっと度胸を据えなければ乗れなかった」
ところでエクレストンは、ギラギラのセレブぶりを発揮するルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)を誉める一方、プライバシーをひた隠しにするベッテルの姿勢に批判的だ。しかしベッテルは、きっちりと公私の区別をつける派だ。
ハミルトンの一挙手一投足が日々、タブロイド誌にあばかれる反面、ベッテルは、パートナーのハンナさんが二人目の子を身ごもっていることを認めようともしない。
「僕個人は、ロジャー・フェデラー(プロテニス選手)が何のクルマに乗ろうがガールフレンド(フェデラーは既婚者)はどんな容姿をしていようが、どうでもいい。僕が気になるのは、彼がスポーツマンとして何を成し遂げたか、その点だけだ」