来季はよりよいF1シートを求めて奔走中のニコ・ヒュルケンベルグだが、現所属チームのザウバーは、つなぎ止めの可能性を捨てていない。
フェラーリ、マクラーレン、あるいはロータスへの移籍や、果てにはフォース・インディア復帰のうわさまで出ているヒュルケンベルグ。いっぽう財政危機に瀕(ひん)したザウバーは、ヒュルケンベルグとの契約を打ち切ったことも明らかになっている。
ところが、大柄なヒュルケンベルグにとって2014年F1の新規則が思わぬ足かせとなり、一部からは来季F1残留を絶望視する見方も出てきた。
そうなるとF1にとって大きな損失だ。6日(日)のF1第14戦韓国GP決勝で4位に入賞し、メルセデスAMG会長のニキ・ラウダから「最優秀ドライバー」に指名されたくらいの男だから、それも当然だろう。
この日の活躍で、どこかのチームがヒュルケンベルグ獲得の方針を固めたりしなかっただろうか?
本人はスイス『20min.ch』に次のように語っている。「もし誰か僕に興味があるなら、ただ一回のレースだけでなく、ずっと僕のことを見ていたはずだ」
たとえどんな活躍を遂げても、たった一度の好成績がF1シートの契約に結びつかないことはヒュルケンベルグ自身、痛いほど理解している。2010年F1最終戦ブラジルGP予選でポールポジションを得たヒュルケンベルグだが、この年限りでチームをクビになっているのだ。
チームが重視するのは才能だけではない。ドライバーの財布にいくら入っているかも気にするのだ。ヒュルケンベルグにはドイツの交通関連機器メーカー『DEKRA(デクラ)』がスポンサーとしてついているが、魅力的な契約とはいえない。
しかしヒュルケンベルグが正式に2013年の関係を解消して以降、ザウバーにはロシアの投資家グループが付き、このグループの資金がチームに流れ始めているという。
韓国GPの活躍は、もしかしたらそこに起因しているのかもしれない。何しろ、ヒュルケンベルグを追っていたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)がザウバーの「とんでもないトラクション」で追い越しできなかったのだから。
そして、ザウバーもこの機会を逃すはずがない。
「彼(ヒュルケンベルグ)の残留は可能性としてあり得る」と、チーム代表のモニシャ・カルテンボーンも話していた。
来季に向けたヒュルケンベルグ争奪合戦は繰り広げられるだろうか。ある情報筋によると、韓国GPの結果を受けてロータスではヒュルケンベルグ株が上昇したという。同チームは来季ドライバーとしてフェリペ・マッサ(フェラーリ)も検討している。
「われわれは1レースの結果でドライバーの良し悪(あ)しを判断しない」と『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語るのは、ロータスのチーム代表エリック・ブーリエだ。
「彼の才能には前々から目を付けていた。韓国で、またまたそれを証明してくれたね。マシンさえよければトップを走れる男だ」
ヒュルケンベルグは『DPA通信』に、次のように話している。「ケータイは常にオンにしているよ」