2013年のタイトル争いに水を差しているのはピレリのタイヤと語るのは、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だ。
「今はあまり選手権のことを考えていない」というハミルトン。これがF1第9戦ドイツGP予選でポールポジションを取ったドライバーのセリフだろうか。「だって意味がないじゃないか」
チームメートのニコ・ロズベルグが直前まで3戦2勝を挙げていたこともあり、決勝ではポールからポイントリーダーのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)を追い詰めてやろうと、前向きな姿勢だったハミルトン。
ところがそのわずか1日後、スチール製からケブラー製へのベルト変更、さらには極端なタイヤ使用方法の禁止措置がマシンの走りに深刻な影響を及ぼした。
いまイギリスでスポーツのヒーローといえば、ハミルトンと、先日の全英オープン・テニス男子単制覇を果たしたアンディ・マレーだ。しかし、ふたりには決定的な違いがあると話すハミルトン。今季のタイヤ事情が、そのもっとも顕著な例だという。
「だって彼には自分の身体とラケットがすべてじゃないか」
「モータースポーツは、実に多くの要素がからみ合っているんだ。例えば電子系の部品やサスペンション、あとは例のタイヤとか、みんな僕の手ではどうしようもないものだよ」と、ハミルトン。
ピレリは、次の第10戦ハンガリーGP(28日決勝)でまたもやタイヤの仕様を変えようとしている。今度は2013年のコンパウンドと2012年の構造を合わせたものだ。
「僕らとしては、マシンとの相性がいいことを祈るのみだよ」と、ハミルトンはドイツ『DPA通信』に話している。
自信を無くした様子がよく分かるコメントである。
「いつか優勝できればいいなと思うけど、現時点で実現する気はしないね」
ハミルトンと同じく、低調なマシン開発に足を引っ張られているのが、フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)。しかしハミルトンは、もっと自信を持ってほしいとかつての同僚にエールを送る。
現在のポイントリーダー、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)を追いかけるライバルたちは、もはやあきらめるしかないのか。そんなことはないと、ハミルトンは次のように語った。「いやいや、フェルナンドは違う。フェルナンドは間違いなく射程圏内にいるよ」