セバスチャン・ベッテル(レッドブル)が、先週末に開催されたマレーシアGPにおいてチームからの指示を故意に無視したとされる件について、レッドブルはベッテルと話し合いを行うことになりそうだ。
マレーシアGPにおいて、2年連続チャンピオンのベッテルに対し、チームから無線を通じてリタイアするようにとの指示が出されていた。その表向きの理由はブレーキが異常な高温となって危険なためだということだった。
しかし、ベッテルは何度もその指示を無視したため、最終的にベッテルのエンジニアであるギヨーム・ロックリンが「緊急事態」だと宣言したほどであった。
ナレイン・カーティケヤン(HRT)との接触事故によってすでにポイント獲得の望みを絶たれていたベッテルだが、終盤でリタイアをすれば、次回の中国GP(4月15日決勝)ではギアボックスを新しいものと交換することが許されているはずだった。
現在のルールでは、1基のギアボックスを最低5レース連続で使用しなくてはならないと規定されており、もしそれに満たない段階で交換すれば5グリッド降格のペナルティーが科されることになっている。ただし、レース中にトラブルが発生したためリタイアした場合には、次のレースに向けてギアボックスを交換してもペナルティーが科されないという例外規定がある。
このため、レッドブルとしてはベッテルをリタイアさせ、クルマにトラブルが発生したためのリタイアとして、次のレースにペナルティーなしで新品のギアボックスを投入しようとしていたのではないかと考えられているのだ。
最終的にベッテルはリタイアすることなくゴールしているが、レッドブルによればベッテルは無線が故障していたため、この指示を聞くことができなかったのだと説明しているようだ。
しかし、このリタイアの指示は、ベッテルがホームストレートに戻ったときに提示されるピットボードにも示されていたことが写真によって明らかとなっている。
そして当のベッテルもレース直後に、うっかり次のように漏らしてしまっていた。
「もちろん(リタイアして)クルマを大事にしておくこともできたけど、僕はチェッカーフラッグを受けたかったんだ。僕はそうすべきだったと思っているよ」
『Bild(ビルト)』紙は、ベッテルが「ボスからの命令を無視した」のだと推測している。そして、レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーも、「そのことについて(ベッテルと)話し合いをするよ」とコメントした。
『Bild(ビルト)』によれば、そのベッテルは中国GPに向けたシミュレーター作業のため、今週末にチームの本拠地であるミルトン・キーンズを訪問する予定になっているという。
また、イタリアの『La Repubblica(ラ・レプブリカ)』紙は、かつて絶対的優位に立っていたベッテルが、今や「その他大勢のドライバーの中の1人」になってしまっており、ベッテルにとって2012年シーズンはここまで「悪夢」が続いていると書いた。