ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)がF1に残るとしたら、ザウバーが唯一のチャンスといえる。
フェラーリと契約寸前まで行ったほか、マクラーレンとも関係がうわさされたヒュルケンベルグ。さらにロータスとは、もう少しで移籍にこぎつけるところだった。
だが今はその可能性も消えた。ロータスは財政難に悩んでいる。チーム首脳は、豊富な資金を持つパストール・マルドナード(ウィリアムズ)と契約し、予算の不足分を補おうとしているのだ。
ヒュルケンベルグは2日(土)、F1公式サイトへ次のように語っている。「F1のキャリアはドライバーによってさまざまだ。いくつかのチームとかかわって、身が細る思いで移籍を繰り返すのが僕のキャリアらしいね」
2010年、ルーキーにして最終戦ブラジルGP予選でポールポジションを奪ったヒュルケンベルグだが、シーズン終了後に解雇。あのときもマルドナードが持ち込んだ多額の金に負けたかっこうだ。
「あれには参ったよ」と、ヒュルケンベルグ。「最悪の展開だった」
「もちろん、それ以来あのことが頭の片隅から離れない。人の言動にうたぐり深くなった。だって、面と向かってウソをつかれたんだからね」
2011年、ヒュルケンベルグはフォース・インディアの控えドライバーとなり、ようやく昨年、実戦に復帰したのだった。2013年はザウバーに移籍。しかし、『Blick(ブリック)』紙によると、今日に至るまでフォース・インディアは給料の完済を果たしていないという。
ザウバー移籍後に見せる数々の活躍とは裏腹に、ヒュルケンベルグの苦労は続く。
4年連続のF1世界チャンピオンでヒュルケンベルグと同じドイツ人であるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は、無給で走っているヒュルケンベルグの窮状を、つぎのように『DPA通信』へぶちまける。
「(2014年の)シートがまだ決まらないなんてあり得ないよ。彼はF1グリッドで最速といってもいいドライバーなのに」
「いくつかのチームにとって今のF1が厳しいことは確かだ。でも、それはドライバーにとっても同じだよ。彼(ヒュルケンベルグ)は、一銭も金を受け取っていないんだから」
今年、ヒュルケンベルグの給料がまったく支払われていない件についてザウバーのチーム代表モニシャ・カルテンボーンは、コメントを拒否している。
「パドックの話題について何もかもコメントする気にはならない」とのことだ。
まったく同じ理由でキミ・ライコネンとロータスは険悪な雰囲気を漂わせている。ヒュルケンベルグとザウバーのいずれからも不協和音が聞こえてこないことから、2014年も両者の関係は続くのかもしれない。
ヒュルケンベルグ本人も、その可能性があると認めた。
ザウバー残留も念頭にあるかとの問いに、ヒュルケンベルグは次のように答える。「イエスだ。そう思うよ」。ザウバーも同じ考えかときかれると、彼は次のようにいった。
「そりゃそうさ。今は調子が上向いている。士気も高まっているんだ」