F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)は、2023年シーズンからドライバーたちがグランプリにおいて政治的発言や行動を行うことを禁止することを明らかにした。
その背景には、最近F1ドライバーたちが社会的・政治的問題に関して発言することが増えてきたことがあるようだ。
その代表格とも言えるのが通算7度F1王者となったルイス・ハミルトン(メルセデス)であり、2022年シーズン限りで引退した4度F1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテルだろう。さらに、マクラーレンのランド・ノリスも自身の経験を踏まえながら、スポーツにおけるメンタルヘルスの重要性を主張し続けている。
■F1がドライバーたちの社会的・政治的活動を禁止
だが、ジャン・トッドの後任として2021年12月にFIAの新会長に就任したモハメド・ベン・スレイエムは、最近増えてきているドライバーによる政治的・社会的活動に対して次のような批判的コメントを行っていた。
「ニキ・ラウダやアラン・プロストが大切にしていたのはドライビングに関することだけだった」
「今では、ベッテルが虹色の自転車に乗り、ルイスは人権問題に情熱を注ぎ、ノリスはメンタルヘルスに取り組んでいる」
そして、FIAはこのほど、F1の「中立性の一般原則」を損なうような「政治的、宗教的、個人的な発言やコメント作成および表示」は今後禁止すると発表。唯一の例外は、事前に文書において承認を得た場合のみだという。
実際のところ、F1は2020年にはハミルトンの提唱を受け入れ、『We Race As One』というスローガンのもと、人種差別に抗議するためにレース開始前にドライバーたちが“膝つき”を行う時間を設けていた。だが、これも2022年シーズンは撤廃されており、FIAやF1がこうしたことにかなり神経質になってきていることがうかがえる。
今回のFIAの動きに対しては、スポーツの統括団体が事実上ドライバーたちの言論の自由を奪うようなものだと批判する反応もあるが、今のところ、この問題に関して大きな動きを示しているドライバーはいないようだ。
■デリケートな問題だが自分には影響はないとヒュルケンベルグ
だが、2023年にハースでフルタイムF1ドライバーとして復帰することになっているニコ・ヒュルケンベルグは、母国ドイツの『n-tv』からこの件について質問されると次のように答えている。
「デリケートで難しい問題だね」
「僕たちはアスリートだ。自分たちの仕事をするために、自分たちが好きなことをするために、ある国、ある地域を訪れている。いずれにせよ、僕はこの機会を政治的見解のために使ったことは一度もないよ」
「だから、このことが僕に大きな影響を与えることはないだろうね。ほかの者たちはもっと影響を受けるだろうけれど、それは個人的なことだと僕は思っているよ」
そう語った35歳のヒュルケンベルグは次のように付け加えた。
「誰にでも、それに対する個人的な態度を持っているからね」