セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)を含む数人のF1関係者が、ミスによるクラッシュが増えているミック・シューマッハ(ハース)の擁護に動いた。
■苛立ちを隠せないハースのチーム代表
今年2年目のF1シーズンを迎えているシューマッハだが、所属チームであるハースのチーム代表を務めるギュンター・シュタイナーも、7度F1王者となったミハエル・シューマッハの息子は昨年から全然成長していないとメディアに語るなど、ミスの多さに苛立ちを隠せていない。
先週末に行われた第7戦モナコGP決勝でもシューマッハはマシンコントロールを失ってウォールに激突。23歳のドライバーが操っていたマシンは真っ二つにちぎれてしまい、もはや修復は不可能だと考えられている。
ただでさえ小規模予算のハースを率いるシュタイナーとしては、シューマッハがマシンを壊すたびに胃が痛くなる思いをしているに違いない。
■ドイツのメディアもシューマッハ批判キャンペーン
こうした中、母国ドイツのメディアさえ、シューマッハに対する辛辣な報道が増え始めている。
例えば、『Der Spiegel(シュピーゲル)』は、シューマッハは「良心的で野心的、そして同情的だ。しかし、常にゼロ点だ」と報じ、F1デビュー以来まだ1ポイントも獲得できていないシューマッハに苦言を呈している。
また、放送局『n-tv』は、「プレッシャーはますます大きくなり、彼のF1での将来はもはや危うい」と報じ、次のように付け加えている。
「彼が長くキャリアを続けたいと望むのであれば、もはやミスをする権利はない」
さらに、ドイツ有数の日刊紙である『Bild(ビルト)』も次のように書いている。
「なぜ彼はこれほどまでにミスをするのだろう?」
■「シューマッハにはポテンシャルがある」とセバスチャン・ベッテル
だが、こうした中、シューマッハのメンター的存在だと言われている同じドイツ出身の34歳のベッテルはシューマッハの擁護に回っている。
「ミックには信じられないほどのポテンシャルがあるんだ」
レッドブル時代に4回F1王者となった実績を持つベッテルはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼にかかるプレッシャーは非常に大きいんだ。だから、自分の居場所を見つけられるよう、彼に時間をあげようじゃないか。何にもまして、彼を窒息させるようなことをしてはならないよ」
■「ああいうクラッシュは誰にでも起こりえた」とランド・ノリス
また、イギリス出身ドライバーであるランド・ノリス(マクラーレン)は、シューマッハのモナコGP決勝でのクラッシュに言及しながら次のように語っている。
「本当のところ、僕たちはすべての周回において、あと数ミリであのようなアクシデントにつながるような走りをしていたんだ」
「ひとつのバンプ(路面の凹凸)を少し間違えて走れば、ギアがひとつ狂うんだ。それが、このレースがすごく大変な理由なんだ」
■「シューマッハにはもう少し時間が必要なだけだ」とフランツ・トスト
また、レッドブルのセカンドチームであるアルファタウリのチーム代表を務めるフランツ・トストも『Auto Bild(アウト・ビルト)』に次のようにコメントしている。
「ミックをあまりにもすぐに見限るべきではない。私は彼を信じ続けている」
「ミックがF3とF2を制したことを忘れてはいけない。たまたまそんなことができるというようなものではないからね」
「ミックにはもう少し時間が必要なだけかもしれない。だから、それを彼に与えるべきだね」
若手ドライバーの発掘と育成に定評があるトストはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼にとってはまだ2年目のF1シーズンだし、全く新しくて運転するのが難しいマシンになっているんだからね」
■「ハースはシューマッハの味方であるべきだ」とノルベルト・ハウグ
かつてメルセデスのモータースポーツ責任者を務めていたノルベルト・ハウグも次のように語っている。
「彼は学んでいるところだ。そして、彼はクルマからすべてを引き出そうとしているだけなんだ」
「ターンインするのが数センチでも早ければ、深刻な結果になりかねないんだ」
「とにかく、チームは今、彼の味方であるべきだよ。もし彼が自分のシステムの結び目を解くことができれば、彼はポイントをとるようになるだろう」
■「僕は冷静だし自信もある」とミック・シューマッハ
ともあれ、今後はシューマッハが抱えることになるプレッシャーがさらに大きくなるのは想像に難くないだろう。
しかし、シューマッハは、自分はそれを冷静に乗り切ることができると主張している。
「そんなことは気にしていないし、僕は新聞も読まないんだ」
最近の自分に対する報道についてそう語ったシューマッハは次のように付け加えた。
「期待が大きいことも、批判を封じるためにすぐにでも順位を上げなければならないこともわかっている。それでも、僕は冷静さと自信を保っているよ」。