レッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイは、F1は風洞を用いたマシン開発を禁止するべきだと考えている。
■レッドブルも最新式風洞の建設を決定
現在では高度な空力設計を行うために、F1マシンの開発には風洞を使用することが不可欠となっている。現在、マクラーレンやアストンマーティンは最新式の風洞を建設中だが、実際のところ、ニューウェイが所属するレッドブルでも新たな風洞を建設することを決定している。
レッドブル首脳のヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)は、この風洞建設について、「我々は今、承認段階にある」とドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に語っている。
伝えられるところによれば、この風洞の建設には2年を要することになるようだ。そして、レッドブルはフェラーリのワークスF1チームと同じように、エンジン部門を含む全ての施設をひとつ屋根の下に置くことになるという。
天才F1マシン設計者、あるいは空力の天才とも言われるニューウェイも、チームには実際に新しい風洞が必要だと次のように語った。
「(現在の風洞は)望ましい風速まで上昇させるのに時間がかかりすぎるんだ。そのせいで、我々に許されている風洞作業時間が大幅に奪われてしまっているよ」
■今後のF1空力開発は風洞からCFDに移行?
しかし、F1はすでに2030年までに風洞での作業を段階的に廃止することを計画している。そして、ニューウェイもその計画に賛同している。
「私なら、全てをCFD開発に完全に限定するだろう」
そう語った63歳のニューウェイは次のように付け加えた。
「その方がずっと持続可能なのだが、残念ながら、それは十分な賛成票を得られないだろう」
ニューウェイが言及したCFD(Computational Fluid Dynamics)とは、日本語では“数値流体力学”と呼ばれるもので、簡単に言えば、コンピューターによって空気などの流れをシミュレーションし、解析するものだ。
現在は風洞内に置かれたF1マシンの模型に実際に風を当てることで、空気の流れを解析する手法が主流となっている。だが、正確なシミュレーションを可能とするためには高精度かつ高額な風洞施設が必要となってしまう。こうした作業をCFD開発に置き換えれば、高精度のコンピューターとソフトウエアが必要とはなるものの、大がかりな風洞施設は必要なくなるわけだ。
しかし、ニューウェイによれば、パドックにいる「いつもの連中」が彼のアイデアに反対しているのだという。